隠れた魅力を伝えたいという想いが
研究のモチベーション

社会環境工学科 学部3年
青木 啓文Aoki Hirofumi
2018年度インタビュー

Q 社会環境工学科はどのような学科ですか。

社会環境工学科(以下、「社工」。)と聞くと何をやっているかわかりにくいですが、昔の学科名は土木学科。つまり、橋やトンネルといった構造物について学ぶ学科です。ただ土木といっても構造物だけを学ぶのではなく、社会基盤部門、計画・マネジメント部門、そして環境防災部門の3分野を幅広く学びます。

Q 環境防災系のゼミを選択したそうですが、何が決め手でしたか。

土木の中でも、人の生命を直接守ることができる環境防災系が大変重要だと思ったからです。とはいえ、環境防災系だけを知っていればいいわけではありません。社会基盤系と計画・マネジメント系と環境防災系は、相互に関わり合っていますから。

Q それはどういうことですか。

防災の例を挙げれば、最近ゲリラ豪雨が猛威を振るっていますよね。そうなると、まず対策のために水の流れを知る必要がありますから、河川工学・水理学の知見が必要になってきます。また、堤防そのものに着目すると、堤防は土でできていますから、ここでは地盤工学・土質力学の知見が必要になります。そして両岸を結ぶ橋梁や都市の排水を担う下水管の設計には構造力学の知見が必要で、これは社会基盤系の知識です。それらをどのように具体的に設置していくか考えるとき、計画・マネジメント系の知識が必要になります。このように、3分野は切っても切り離せません。人の生命・くらしを守るという一つの目的に向かって、それぞれの分野が連携し合っているのです。

社会環境工学科では
自然が持つ二面性を学べる

Q 具体的に、どのような研究に関心がありますか。

土と水の挙動ですね。土への関心を先に話すと、どんな構造物も土の上に建っています。一口に土と言っても地盤や漆喰、レンガなど、さまざまな形態の土があります。実際、生活の様々な場面で、私たちは土を構造物の材料に利用しています。しかし、土は構造物の材料になる一方で、土砂崩れなどの災害の原因にもなり得ます。
次に水への関心ですが、日本は河川が豊富で、この河川に沿って堤防が築かれています。さらに、川は海につながっていて、海にはテトラポッドや港湾施設がある。水に囲まれた日本人の生活を、土木が支えてきました。しかし今、ゲリラ豪雨や洪水など今まで考えられなかった自然災害が起こっています。土と水の恩恵を受けてきた日本の暮らしが、むしろ土と水によって脅かされつつある。こうした自然の持つ二面性に心がひかれます。

まちのあらゆるものには
土木技術が隠れている

Q 描いている将来のビジョンについて教えてください。

学問としては環境・防災系を軸に学んでいきたいのですが、仕事としては、元来興味のあった鉄道会社で土木関連業務に就きたいと考えています。高校生の頃、季節ごとの休みを利用して日本中を鉄道で旅行しました。電車に乗れば津々浦々まで行くことができ、ダイヤは秒単位の管理。日本の鉄道のレベルの高さは世界に誇るものがあります。しかしそんな鉄道も、線路がなければ走れませんよね。そして、その線路は地盤の上に敷設され、谷には橋梁を架け、山や都市の地下にはトンネルを掘っています。地盤工学・橋梁工学をはじめとした知見が求められます。ですから、鉄道の世界でも、社工で学ぶ分野は密接に関わっているんです。

鉄道旅行で撮影した橋梁と花火

Q 土木分野には、かなり前から関心を持たれてきたのですか。

今でこそ社工の学問が大好きですが、社工に入る直前まで、土木分野は考えていなかったんです。入学前は鉄道で様々なまちを見て回ることが好きなこともあって、いわゆる「まちづくり」の分野を頑張ろうと意気込んでいました。しかし、1年前期は特に興味のない科目も多く、やる気をなくしかけたんですね。ただ、授業を受けているうちに、高校生の頃に日本全国の見て回った街並みと土木の知識が少しずつリンクしてきたんです。あれらのまちを成り立たせているものは、今習っている土木技術であったと気がついて、土木の学習全般に興味を持てたんです。そのお陰で、環境・防災系分野の大切さを深く認識することもできました。

Q 最後に、社工を目指す高校生へのアドバイスを。

日常に疑問を持って欲しいです。不自由なく安全に過ごせているのはなぜなのか、ぜひ自分自身に問いかけて欲しい。高層ビルから地下の設備まで、まちのあらゆるものには、土木技術が隠れています。一つ一つに興味を持てば、土木の魅力にもっと気が付けるはずです。