環境負荷の低減目指すとともに、さらに効果的なサービス提供を目指す

経営デザイン専攻 修士1年
松村 樹里Matsumura Juri
髙田研究室
2015年度インタビュー

Q 研究テーマから教えて下さい。

学部の卒業論文から続けているテーマは「環境調和型ビジネス」です。
かつての日本はモノを大量生産、大量消費、大量廃棄する社会で、環境に負荷をかけていました。そのため、現在では環境調和型ビジネスへの転換が求められています。このような流れの中で、PSS(製品サービスシステム)という概念が注目されています。これは製品とサービスを組み合わせることで顧客に機能を提供するという考え方です。たとえば、洗濯機を例に考えてみましょう。この場合、顧客は洗濯機という機械そのものを求めているわけではなく、服をきれいにするという機能を求めていると考えることができます。こう考えると、クリーニング店やコインランドリーの活用なども選択肢に入ってきますから、誰もが洗濯機を購入する必要はありません。
その結果、物質的な生産量をある程度減らすことができるのです。
しかし、PSSに基づく環境調和型ビジネスの従来研究では、製品ごとに環境負荷削減効果のある提供方法を考えていて、顧客の要求という観点が欠落していたのです。そこで私は、環境負荷の軽減を目指すとともに、顧客の要求にもとづいた製品サービスの設計手法を考えてみました。

顧客の要求とサービスとの関係を、顧客の「負担」から考える

Q 具体的にはどのようなことを研究したのでしょうか。

すでに行われているPSSビジネスの一つとして、MDS(マネージド・ドキュメント・サービス)があります。MDSとはドキュメント業務全般にわたるサービスであり、消耗品の補充やメンテナンス等のサービスを提供しています。卒業論文では、この事例をもとに顧客要求から環境負荷を軽減する製品サービスを決定する設計手法を提案しました。
始めにMDSにおける顧客要求を使用時やメンテナンス時など場面ごとにすべて列挙します。次に、MDSのサービスを列挙します。そして、両者の関係性を数字で表すために、「顧客の要求とは負担(負の価値)を削減することである」と考え、その負担を①時間、②労力、③心理面、④金銭面に分けました。そして、「顧客要求ごとに持つ負担をサービスによってどの程度削減できるのか」という観点から、両者の関係性を数値化しました。たとえば、あるサービスである顧客要求が持つ4種類の負担のうち、2つは解決できるとしたら、両者の関係性は0.5にする、というような形で数値化したのです。
次に、環境負荷を軽減するために行ったのは、評価指標を導入することでした。電化製品の製品ライフサイクルは「製造」「輸送」「使用」「回収」「廃棄」という5つの段階があります。この各段階で、いかにCO2排出量を少なくできるかを指標に入れたのです。具体的には、「顧客の使用価値/コスト×環境負荷」という式で指標を示し、この値が最も高いものを顧客に提供することで、環境負荷削減効果が期待できる製品サービスを顧客に提案することを可能にしました。

Q 今後の研究は、どういう方向で考えていますか?

顧客要求とサービスとの関係性を定量化する方法を考えることができたので、複写機を異なる製品に代えて要求やサービスの項目を考えなおせば、そのまま指標を算出できるようになりました。しかし、いちいちこれら項目を考えるのも手間がかかります。現段階では、様々な製品で使える汎用性のある製品サービス設計手法を検討しているところです。

Q 研究の面白い点、大変な点を教えて下さい。

面白い点は、解決策を見つけた時でしょうか。卒論でいえば、顧客要求とサービスとの関係をどういう観点で見るか悩んだのですが、顧客の動作=負担という観点で見ることを思いついた時に、やっていてよかったと思いました。
大変だったのは、作業に時間がかかることです。卒論の最後に、顧客に提供する製品サービスごとにCO2排出量と総コストがどれくらいになるかをシミュレーションしたのですが、作業量が多くて大変でした。研究室に泊まったこともあり、先輩にも手伝ってもらいました。
でも、大変な作業も終わってみれば楽しいこともたくさんあったし、一つの論文を書き終えたことで自信にもつながっています。

思い切って挑戦すれば、何とかなる!

Q 学業以外で、何か貴重な経験をしたことは?

私は就職活動を行った後に、大学院に進学することにしたのですが、その就活の前まで、約7ヶ月間、インターンとしてウェブ制作会社で働きました。当時は社員4人の小さな会社で、ホームページの記事やマップを更新する作業を担当していました。
就活が始まるので、そろそろやめなければならない時期になって、自分で新しいコンテンツを作りたいと思い、思い切って社長に頼んでみたところ、OKが出ました。そして、当時制作に携わっていた「ハラジュク・ドアーズ」というページで、「おしゃれさん」というストリートスナップのコーナーと、「教えて店員さん」というページを作らせてもらえました。待ちゆく人にいきなり声をかけるなど大変なことも多かったですが、大切な思い出です。

「おしゃれさん」 http://blog.harajuku-doors.net/category/fashio
「教えて店員さん」 http://blog.harajuku-doors.net/2013/08/06/7507.html

Q 将来の志望等はありますか?

いつかは決めていないのですが、将来自分の会社を持ちたいと思っています。個人事業主でも良いのですが、自分で仕事をしたいのです。そのために、まずは就職し、ビジネスの流れを俯瞰的に見られる職種に就きたいですね。
業種は、正直まだ定まっていません。しかし、どこに行っても何とかなるだろうと楽観的に考えています。
これまでも、たとえば、いきなりウェブ制作会社に飛び込んでみたり、英語があまり得意ではないのに、大学の短期留学プログラムに参加してみたりしましたが、何とかなりました。だからこれからも何とかなるだろうという精神で、とにかくいろいろなことに挑戦していきたいですね。
受験生の皆さんも、何かを始める際、心配して立ち止まっているくらいならば、何とかなるという精神で、思い切って挑戦してみて欲しいと思います。頑張って下さいね。