地圏・水圏・大気圏全体を学ぶこと
それが環境問題に取り組むスタート地点

地球・環境資源理工学専攻 修士1年
篠崎 智博Shinozaki Tomohiro
所千晴研究室(環境資源処理工学研究室)
2017年度インタビュー

Q 環境資源工学科はどのような学科ですか?

まず「地球科学を学ぶことができる」点が環境資源工学科の特徴です。私の場合、環境問題に興味があって本学科を志望したのですが、環境問題に取り組みたければ、地球を構成する地圏・水圏・大気圏をそれぞれしっかり理解するところから始めるべきだと思います。これらを全体的に学べるのが環境資源工学科の強みです。ですから、環境問題に興味がある方には良い学科だと思います。

Q 高校の科目で言うと、どの科目が中心になりますか?

環境資源工学科の取り扱う分野は、理数系の科目を統合して課題の解決に当たる「総合工学」です。その意味では、課題に応じてどの科目も中心になり得ますが、他の学科と異なり「地学」を深く学べることが特徴です。ただ、決して「地学」一辺倒ではありません。1年の段階で物理・化学・生物・地学すべてが必修科目ですし、研究室に入ると「化学」「物理」の知識を活用します。たとえば、水圏を扱う研究室では「化学」を使うことが多いですし、資源開発で地下の構造を見るための電磁探査などには「物理」の知識が使われています。私自身は高校時代「化学」が好きで、現在の研究でも「化学」の知識を使っています。
それから、これは教職課程の単位を取得する際に気づいたのですが、ほかの学科では理科4教科すべてを学べるわけではなく、教職を取るために、わざわざ本学科で「地学」の授業を受けに来る必要があるのです。ですから、環境資源工学科では教職課程を取りやすいというメリットもあります。

吸着剤を用いて
廃水から希土類元素を回収する

Q 現在の研究の内容を教えてください。

所千晴教授の環境資源処理工学研究室で希土類元素を取り出すための研究を行っています。希土類元素とはいわゆるレアアースのことです。産業技術総合研究所との共同研究なので、主につくば市で研究を行っています。
鉱山廃水や工場廃水には、鉄やアルミニウムなどありふれた元素が多く含まれていますが、希土類元素が微量に溶け込んでいるものも存在します。その希土類元素を吸着剤を使って取り出そうとしています。この研究がうまくいけば、これまで資源として利用されていなかった廃水を希土類元素の資源にできるようになります。

Q 具体的にはどのようなことをしているのでしょうか。

吸着剤を作るところから始めて、性能評価を行うまでが一連の流れです。現在は、スチレン−ジビニルベンゼン系の粒子を吸着剤の母体として試しています。およそ0.5mmの粒子を作製して、そこに希土類元素を選択的に吸着する官能基を修飾すれば、吸着剤の完成です。これを希土類元素が溶け込んだ水に入れて、どれだけ吸着できるかを調べます。
今のところ、一般の方でも馴染み深いシリカゲルを母体に用いた吸着剤も性能が高いのですが、吸水性が高いので、水に溶けてしまったり、割れてしまったりして、実用化には向いていません。水に溶けず、割れないような吸着剤の作製を目指しています。

Q 研究のやりがいや苦労を教えてください。

「こうしたら、こうなるだろう」と、研究や実験のことをあれこれと想像するのは楽しいです。それから実際に計画を立てて、手を動かして、調べてみるのですが、実際にやってみると予想通りにならないことが多いので、その時は「なんでだろう?」と考え込んでしまいます。ただ、予想外の結果が出ること自体は、失敗ではありません。新たな発見につながることもあるのでわくわくすることもあります。

Q サークル等はやっていましたか?

「環境ロドリゲス」というサークルで、環境保護のための活動を行っていました。具体的な活動内容は、ごみ分別のボランティアや、再生素材のリサイクルです。ポリカーボネートというプラスチックをリサイクルして、スマートフォン用ケースを開発・販売したのは良い思い出です。

Q 早稲田を目指す受験生にアドバイスをお願いします。

環境資源工学科では理科全般を学べますが、実は研究には英語が大切です。最先端の研究論文は英語ですし、所研究室では毎年4〜5人の留学生が在籍しているので、コミュニケーションツールとしても英語を使います。イタリア人の助教とのやりとりも英語です。ですから、しっかり学んでおいたほうが良いと思います。
早稲田にはOBOGが多く、上下のつながりが強く、さまざまな場面で助けてくれるあたたかい大学です。ぜひ、環境資源工学科に入って早稲田の良さを実感してほしいですね。