早稲田建築の象徴ともいえる
デザイン・意匠とは異なるベクトルから
人の住まう環境を研究する

建築学科 学部4年
竹内 駿一 Takeuchi Shunichi
田辺新一研究室
2018年度インタビュー

Q 現在の学科・研究室に所属されている動機についてお伺いできますでしょうか。

小学生の頃、父とモデルルームに足を運んだ際、「建物を建てる人ってカッコいいな」という想いを抱いたことから建築学科を目指しました。
研究室を選ぶ際には、将来の職業や進学も考慮しながら検討を重ねましたが、私はもともと意匠より施工や環境などの分野に興味がありましたので、環境系の研究室を選択しています。所属する田辺研究室は、先進的なデータや意見を柔軟に取り入れていこうという姿勢があり、新しいことに取り組んでいるという自覚を持ちながら研究に注力しています。

Q 現在の研究内容について教えてください。

私の研究テーマは「睡眠の質的向上」。現在、人々の「睡眠」が注目を集めています。世界的に見て、日本人は睡眠が不足していることが有識者より指摘されており、その経済損失は最大15兆円以上にのぼるとも言われていますが、根本的に睡眠時間を延ばすのは個人の環境に因る部分が大きく難しい。睡眠の質を上げることで、日本で働く人々の生産性向上につなげることができればという思いで取り組んでいます。
睡眠の質に影響がある要素としては、生活習慣、室内環境などさまざまなものがありますが、私の研究室は環境系ですので、どのような温熱環境の中にあれば睡眠の質が向上するのかという事について、研究を重ねています。

Q 睡眠の質と言うのは、どのように測るものなのでしょうか。

「今日はよく眠ることができた」「目覚めがよい」など、個人の感覚的な部分である心理評価と、計測した脳波から導きだす生理評価を用いて睡眠の質を評価していきます。私の研究室では生理評価を重視しており、5段階ある睡眠の深度を基準として、どれだけ深く眠ることができているかを計測。空気温度、相対湿度、気流速度、放射温度、代謝量、着衣量の温熱6要素で環境を評価し、睡眠の質と環境の相互関係を調べています。
これまでの研究では6要素のうち、代謝量については常に一定の数値が用いられていました。年齢層や性別等が考慮されていなかったのです。しかし、当然ながら個々人で代謝量は異なるもの。計測の際は被験者の基礎代謝量を測り、温熱6要素を用いて温熱環境を算出する式に代入することで、より精度の高いデータを導き出すことに成功しています。

基礎代謝量を計測する竹内さん

Q 研究を進める上での楽しみや、醍醐味について教えてください。

答えが出ていないものに対して、イメージを膨らませながら仮説を検証していく。この繰り返しの中で、やはり自分の思い描いた結果が導き出せたときはうれしいですね。予想外の結果になった時は落ち込みもしますが、なぜそうなったのか理由を探し出すプロセスもまた楽しい。研究室内では企業との共同研究を行う機会もありますので、自分の研究が何らかの形で活かされることがあればうれしい限りです。

建築工程の1から100までに携われる
職業に就きたい

Q 早稲田の建築学科というと、課題や研究で忙しいイメージがありますが、プライベートとの両立は可能ですか?

実質的な休みはない、というぐらい忙しい毎日ではありますね(笑)。ただ、私自身は陶芸サークルに所属し、早稲田祭で作品を販売するなどといった活動を行っていましたし、2年次からは小学生を対象に勉強の楽しさを教える講師のアルバイトも行っていました。私が知る限りではプライベートな時間がとれないという人はいませんね。日々提示される課題はもちろん優先すべきですが、自分次第で多くのことを経験できる環境は整っていると思います。

Q ご自分の将来についての考えをお聞かせください。

現在興味があるのは、所属する研究室の分野とは異なりますが、施工管理という職業。施工管理は、設計された建物をいかにして形作るかを考える、建築における「ものづくり」の最前線に立てる職業です。建築の仕事というと、建物の設計を行う建築家のイメージが大きいですが、実際には設計された建物を形にしている人々がいるのです。建築学科での生活を通して、建物の基礎から外壁まで、ひとつひとつ自分の目で確かめながら建物をつくりたいという気持ちが芽生えました。生活する人々が生き生きと過ごせるような建築に携わることができればうれしいですね。

Q 最後に、受験生へのメッセージをお願いします。

建築学科では課題のウエートが大きいため、必然的に学科の友人と助け合いながら課題をクリアしていくことになります。これによりできる友人の輪は、大学生活においてはもちろん、その後の人生においても大きな糧となるのではないでしょうか。
早稲田は多様な学部学科・人材が集まる場ですので、日頃からアンテナを張り巡らせていれば、新たな人や興味と出会うチャンスが豊富にあると言えます。建築物に興味がある方はぜひ建築学科にチャレンジし、チャンスをつかんでください。