世界を股にかけて働く中
再び学びの場を早稲田に求める

株式会社富士通総研
コンサルティング本部 クロスインダストリーグループ
(※所属は取材当時)
鈴木 佐俊Suzuki Satoshi
2001年 経営システム工学専攻修士課程卒業
2018年 経営システム工学専攻博士課程
後藤研究室
2018年度インタビュー

Q 企業に籍を置きながら学生として研究を行っている鈴木さんですが、その理由を教えてください。

顧客の新規事業立ち上げに際し、市場リサーチを行い、ビジネスに関する提言をするのが私の主な仕事。コンサルティングをする上で、米国・シリコンバレーなど海外に出張をする機会があるのですが、伺った先でお会いする方がドクターであることが非常に多いため、博士号を取得したいと思ったのがひとつ。また、先輩にあたる後藤先生と仕事上でお会いする機会があり、最先端の研究についてお話を伺ったところ非常に興味が湧いたというのも大きな理由ですね。
大学での研究内容は最先端であり、故に現実との乖離があることから「大学で学んだことは20年後に役立つ」と言われることがありますが、私が学んでいたIT・AIの世界は20年を待たずして、かつて研究していた事柄を時代が追い抜いていきました。そういった状況の中、もう一度腰を据えて勉強したいという思いでキャンパスに通っています。

Q 具体的な研究内容についてお伺いできますでしょうか。

後藤研究室で研究している内容は、情報数理応用研究と呼ばれるものになります。分かりやすく言えば、今話題のAI(人工知能)やデータサイエンスの工学的応用ですね。後藤先生が所長を務めるデータサイエンス研究所では、購買履歴等のさまざまなデータを企業から受け入れ、研究結果をフィードバックしています。
そんな中で私が特に注力しているのが、「ビジネスデータを使用した意思決定支援システム」に関する研究。例えば、企業活動における投資や判断の局面で、確率的指標とともに答えを提示するというものです。最終的な判断はもちろん人間が行いますが、指標となり得る信頼性の高い答えを提示するにはどのような理論に基づくべきかを追求しています。

Q 近年非常に注目を集めているAIの分野ですが、私たちの日常生活にどのような変化をもたらすのでしょうか。

掃除機をひとつ例に取っても、ホウキとちり取りからキャニスター型の掃除機、そして掃除ロボットへと進化を遂げてきました。これからはAI等を駆使する形で、自分のカラダを動かさずとも望んだ作業を家電製品が行ってくれる、そんな時代が来るのではないかと言われています。これにより人々の暮らしはさらに豊かなものとなり、生活水準は上がるでしょう。
私が現在研究しているのはあくまでビジネスベースのものですが、ロジック自体は日常生活を豊かにするあらゆるテクノロジーにも応用可能です。そういった意味では未来の人々の豊かな生活に貢献できる可能性がありますので、後から振り返った時に、自分の研究が意義のあるものだったと思える内容にしていきたいですね。 実用例を挙げると、ネットショップで見られる商品のリコメンドはAIのひとつの使い方です。大企業が能動的にデータを蓄積し活用し始めたことで、情報を活かした提案が普及しつつあります。

Q ビジネスの現場ではいかがでしょうか。

同じネットショップで言えば、今後は値下げのタイミングなど、経営面においても利益確保のための指標をAIに提示させるような使い方もあります。 近年は旧来の様に、単純に製品を作って売るというシンプルなビジネススタイルに加えて、補償サービスなど確率的な仕組みを噛ませて利益を得ることが必要とされてきています。経済活動をする上で、データに基づく確率を駆使したビジネスが、今後はより増えていくでしょう。
スタートアップを含めさまざまなテクノロジーを持った企業があり、AIを駆使して事業を行いはじめていますが、それが本当に有用なものなのか見分けることが出来なければ、利用する側としてはビジネスリスクになってしまう危険性があります。企業人としてその選球眼を磨きたいと思ったのも、改めて学びたいという動機になっています。 現在は多様なAIと呼ばれる技術が存在し、AI自体の定義もあいまいな状況。そんな中でウソを見抜く理論的背景への理解が必要だと思います。

Q 注目を集める最先端の分野に興味を持っている受験生も多いと思います。

年々進化を続ける中、ゲームの世界では人間にAIが勝つという時代が到来しています。今後も様々な分野で応用や発展が進むでしょう。情報数理応用研究をはじめ、興味関心のある事柄を実現できるひとつのフィールドとして、早稲田大学は十分な機能を備えているのではないでしょうか。

何かを始めるのに
遅すぎることはない

Q 社会人としての経験を経て、再び大学で学んでいる現在の率直な感想をお聞かせください。

企業で管理職として働く中、こうして改めて大学に学びの場を求めるという事に、最初は正直躊躇する面もありました。しかし、再び学生として勉強をし始めて感じたのは「何かを始めるのに遅すぎることはない」という言葉は本当だということ。私より年齢が上の学生もいらっしゃいますし、今の学生がどのように勉強しているかを知ることは、企業でリーダー的な役割を担う上でも大いにプラスになります。私が通っていた2000年前後より確実に勉強している学生が多い、という事が分かったのは大きな収穫でした。
大学は経歴や年齢を問わない開かれた場だと思いますので、学びたい意欲がある方はぜひチャレンジしていただきたいですね。

Q 最後に、受験生へのメッセージをお願いします。

早稲田大学には、勉強する環境としてこれ以上ないものが揃っています。留学や就職に関するケアも手厚いものがあり、自分が若い頃に同じ状況だったら、きっとチャンスを活かしていたのではないかと思うほど。国際学会で活躍する学生が在籍するなど、学生のレベルも高い大学ですので、学びたいという志がある方はぜひこの環境を勝ち取っていただければと思います。