福島第一原発の燃料デブリに、
超重泥水で立ち向かう

社会環境工学科 学部4年
岩﨑 充希 Iwasaki Mitsuki
小峯研究室
2021年度インタビュー

Q 研究内容を教えてください。

2011年の東日本大震災にともなう福島第一原発の事故により、原子炉内部の冷却水の循環が止まってしまい、核燃料が融解。所謂メルトダウンを起こしました。この際に溶けた数百トンにおよぶ核燃料の残骸を「燃料デブリ」と呼びます。
この燃料デブリは、当然、放射性物質を排出しますから、処分が必要になります。廃止措置には実に30-40年の時間がかかると言われていますが、ひとまず燃料デブリを取り出し、放射性物質を排出しないように、どこかに保管する必要があり、これを「中間保管」と呼びます。
この中間保管の際に、「超重泥水」という水よりも粘性がある特殊な泥水を使うことが検討されています。燃料デブリは放射性物質を排出するだけでなく、熱を発生させるので放熱性も求められます。この部分、すなわち超重泥水の放熱性の評価が私の研究テーマです。
超重泥水は4つの材料で成り立っています。その4つとは水、ベントナイトという粘土、それからバライトと呼ばれる鉱石と分散剤のピロリン酸ナトリウムのことで、ピロリン酸ナトリウム以外の3つの比率によって、放熱性が変化すると考えられるので、配合を変えて実験をする予定です。

Q 原発の問題に関心があり、社会環境工学科を選んだのですか?

東日本大震災の被害に衝撃をうけて、防災のために何かできることはないかと考えたのがきっかけです。原発事故は東日本大震災がもたらしたものですから関心はありましたが、当時は直接携わりたいという思いはありませんでした。
震災後も熊本地震をはじめ、首都圏での水害など、私たちは常に災害が起きている世代でしたから、防災に興味が出るのはある意味で当たり前のことでした。
原発事故を「土木のこと」として意識するようになったのは、3年生時の環境地盤工学という授業。その中で原子力発電所の放射性廃棄物を、地下300メートルの深い地層に埋めて処理をする処分方法についての授業があったのです。土のような身近なものを使って、放射性物質のバリアのようなものを作ることができるというのに驚き、「土木」ってこんなこともできるんだと感激。担当の小峯先生の研究室を志すようになったのです。

Q 研究の面白いところは

研究室に入ってまだ数ヶ月なので、研究について話せることはあまりないのですが、これまでやってきたのは「勉強」だったのだと感じます。答えがあり正解のあるものでした。
研究は何が正解かわからない状態で、手探りで進めていくことなんだと少しずつわかってきました。特に超重泥水の放熱性の研究は、先行事例もあまりないので、どこから手をつけて良いかわからない。実は、実験装置も自分で作ったんです。
でも、自分としてはそれが楽しい。私は性格的に何かを強制されるのが大嫌いなので、なにもかも自分で考えて、試せるというのは向いています。自分でやろうと思ったことなので、否応なしにモチベーションはあがりますし、責任感も出てきます。さらに、悩んだときにはなんでも相談できる先生や先輩、仲間もいるので心強いです。

自作した実験装置

取れる授業は全部取るくらいの勢いで

Q これから入学してくるひとに一言

社会環境工学科は扱う範囲が広いので、人によっては興味のない授業が多いということもあるかもしれません。でも、やりたいことのためにも、興味のない分野の授業こそ頑張った方がいい。たとえば都市計画には、防災の知識は必須ですし、防災の専門家が構造がわからないと具体的に役に立てる範囲が狭まってします。全てが関連しているのです。
卒業単位だけ取れれば良いという考え方も否定しませんが、せっかく大学に入るのですから、取れる授業は全部取るくらいの勢いで大学を使い倒して欲しいですね。