ジオポリマー、
新規用途開発

環境資源工学専攻 修士1年
北村 稔Kitamura Minoru
山﨑研究室
2015年度インタビュー

Q 研究の内容を教えてください。

ジオポリマーという物質をご存知でしょうか?ジオポリマーは、コンクリートの代替材料として注目されていますが、この物質の利点は、低コストで容易に作製できること、そしてCO2排出量が少ないことです。まず、石炭火力発電所の副産物である石炭灰等を主原料としているため、とても安価です。そして、これをアルカリ溶液で処理、養生するだけで、簡単にジオポリマーを作製することができます。
コンクリートの原料はセメントであり、セメントの生成過程で二酸化炭素が大量に発生します。しかしジオポリマーは、言わば灰や砂とアルカリ溶液を反応させるだけなので、二酸化炭素の発生量を80%程度削減できます。いいこと尽くめの材料なのですが、コンクリートの代替材料として研究が進んでいるのに対し、他の分野では十分に検討がなされておりません。そこでジオポリマーの新たな有効利用先はないかと考えたのです。
そこで、私が着目したのが、吸着材としての利用でした。
環境保護のために、産業廃棄物から重金属イオンを取り出す必要があります。このために吸着剤を用いるのですが、既存のものは高価格なものが多いのです。ジオポリマーのような安価な材料が吸着剤になれば、大きなインパクトになります。
ジオポリマーに関する論文を呼んでいくと、たしかに重金属イオンを吸着するらしいことが分かってきたのですが、どういうメカニズムなのかが分かっていません。そこで、学部4年の一年間はそのメカニズムの解明に取り組みました。

Q どのようなメカニズムなのですか?

ジオポリマーはSi原子と酸素が結合した四面体、そしてAl原子と酸素が結合した四面体、この2つを基本単位として、これらが三次元的にポリマーを形成しています。
Si原子の電荷は+4です。これに対し、酸素由来は-4であり、全体として電荷が±0となります。
一方、Al原子の電荷は+3です。これだと四面体の電荷が−1になってしまいます。物質は電気的に中性ですから、この−1のところをつかって、重金属イオンを吸着させようとしています。重金属イオンというのは、基本的にプラスのイオンなので、そこに吸着してくるのです。
実はこれにも問題があって、価数が1の銀のような重金属イオンであれば、問題なく吸着できるのですが、価数が2や3になってくると、ジオポリマーの構造からAl原子が溶出してしまい、吸着メカニズムが複雑になることが分かりました。ですから、私は価数が1のものを対象とした吸着剤を検討しています。

知らないことを学ぶときが、楽しい

Q この研究に興味をもったきっかけは?

山﨑研究室のコンセプトに、—未利用の物資や、廃棄物を利用して優良な材料を作る—というのがあります。ジオポリマーという安価な物質を吸着剤に利用しようと考えたのは、その影響が大きいですね。吸着材としての応用を検討した先行研究も複数あり、自分が研究する際には非常に参考になりました。
研究テーマも比較的自由に決めることができました。そういったところも自分に適していたと思います。自分のことと研究生活を両立させたいという人には向いている研究室だと思いますね。
山﨑研究室は個性豊かなメンバーがたくさんいるので、普段の何気ない会話でも刺激になります。

Q 研究をする上で、喜びを感じるのはどんなときですか?

知らないことを学ぶときが、楽しいなと感じます。
研究では自分のオリジナリティを加えることが大切です。まだ誰もやっていないことを試みることが研究のオリジナリティとなります。私の研究で言うと、価数が2以上の重金属イオンを吸着させるとAl原子が溶出する、というのは、まだ報告されていない、オリジナルな発見なのです。
当然、私も初めて知りました。自分の研究を通じて分かった発見だからこそ、新しいことを学べて嬉しいと感じています。

せっかく大学進学するのなら、目的意識を

Q 大学と高校との違いはどんなところですか?

自分のことを自分で管理する機会が多くなります。例えば、授業は高校のように時間割があるわけではなく、自分で申請します。勉学、バイト、休日など、時間を自分で管理するというのは大きな違いですよね。これをきちんとしないと、大学生活を充実したものにするのは難しいと思います。
また、この学科では4年生から研究室に所属することになり、それまでは座学の期間です。座学が苦手という人もいると思いますが、そんなときのために、「今、何のために勉強しているのか」ということを意識することが大事だと思います。基礎をしっかり学ぶことで、その先の応用が見えてきます。
その上で、せっかく大学に進学するのであれば、目的意識を持って進学して欲しいな、と思っています。やりたいことが分からないから、それを見つけるために進学した、という理由でも構いません。あとは、行動に結び付けることです。早稲田は、多様な希望に応えてくれる環境が整っていますから。