早稲田建築で研鑽を積み、
いつか周囲を幸せにできる建築家に

建築学科 学部3年
中尾 直暉Nakao Naoki
吉村研究室
2018年度インタビュー

Q 建築学科では現在どのようなことを学ばれていますか。

設計を中心に学んでいます。建築学科は1年生で製図を学び、2年生で設計の初歩に入り、3年生で本格的な設計に打ち込み、4年生で集大成として卒業設計を行います。このうちもっとも課題が多いのは3年生で、量・質ともにこなすのが非常に大変です。例えば、設計製図Ⅲaという授業では、新橋駅前に100社の小売業者が暮らす自治都市を設計するという難しい課題がありました。建物を横に広げれば敷地が不足しますから、限られた敷地の中で市場を工夫して設計する必要があります。また、港区・中央区・千代田区が接する境界線上に建つという条件があるので、土地所有権の問題もあります。
私はオフィスと市場で構成される26階建てのビルを設計しました。低層階の市場にオーニングと呼ばれる布製のひさしを、100社分デザインして取り付けたことが特色です。オーニング同士は雨の日に傘が重なり合うように、ゆるやかに空間を共有しています。そうすると、三区の小売業者がそれぞれ空間を共有しますから、店舗同士が融合して市場が一つになるのです。
設計案の様々な表現手法も、3年間で身に着けました。第一課題では、大きな模型と簡単な図面でプレゼンボードを構成していましたが、第三課題の時には、3Dソフトで建築を設計し、それをもとに建築写真をCGで描きました。自分が表現したい内容によって、さまざまな表現方法を使い分けなければなりません。毎日が学びの連続でした。ただ注意しなければならないのは、大学で学べることのほとんどは、自発的に行動することによってしか得られないというところです。早稲田大学は、そのような学びの種が至る所に存在している場です。例えば、優秀な先輩の設計課題のお手伝いを買って出ることで、新たな設計手法や表現方法を知ることができます。しかも、それを何度か繰り返していくうちに、いつの間にかたくさんの先輩や建築家の方々と知り合うことができました。また、設計が始まると課題の相談会が毎週ありますが、これは最も価値のある時間です。建築家の方々に自分の拙い考えをぶつけると、彼らは建築家として長年活動してきた経験から貴重な意見を与えてくれます。この時間にどれだけの精力を注げるかもまた自分次第です。

設計製図Ⅲaで取り組んだ課題

自ら行動し、発信することが
インスピレーションを刺激する

Q どのようにして着想を得るのですか。

良いアイデアを得るには、街を歩くときやニュースを見るときなど、常に考えをめぐらす必要があります。課題が発表される前から自分の頭の中にアイデアを用意しておくのです。考えたことは頭の中だけで結論を出すのではなく、SNSで発信するようにしています。アウトプットするとアイデアが整理されたり、あるときには変化したりして思考が深まります。
旅行することも良い刺激になります。1年生の夏には電車で日本一周をしました。旅行のテーマは、ル・コルビュジエの弟子からの系譜の代表作を見て回ること。師弟関係を整理し、地図に書き出しました。そして1ヶ月をかけて建築物を見て回ったのです。日本の近代建築史を、空間体験として自分の中に取り込むことで、建築を学ぶ下地ができました。
ほかに、2年生ではスペインとフィンランド、今年はフランスでそれぞれ近代建築をじっくり見学しました。建築設計事務所でアルバイト代を貯めては旅行に行っての繰り返しです。建築学科では、体験を重視しています。見て触れたことが設計に直結すると教わりましたので、その通りに実行しています。

早稲田大学に入学してから
建築への考え方が変わった

Q 建築学科を目指した理由は何ですか。

私は長崎県出身で、ハウステンボスを設計した池田武邦さんに憧れて建築家になりたいと思いました。街そのものを設計してしまうダイナミックさはもちろんのこと、電線の地中化や、海水淡水化プラントなど、環境に配慮して作り込まれているところに感動しました。入学当初は池田先生のような偉大な建築家を漠然と目指していましたが、早稲田大学で建築を学ぶうちにさまざまな刺激を受け、目標はより具体的になってきました。
大きな建築物を設計することは社会的なインパクトがあります。しかし、私はそれよりも周囲の人を幸せにすることこそが建築の意義ではないかと思うのです。所属する建築系の学生団体のプロジェクトで、ある古書店のために本棚を製作したことがありました。地域の文化的生業に、建築的な提案をするプロジェクトです。店主と何度も打ち合わせを重ねてオーダーメイドの本棚を作ったのですが、コミュニケーションを重ねながら1つのモノを作り上げていく感覚は、まるで店主のために家を建てているかのようでした。目の前の1人を喜ばせることを、私の活動の目標にしたいと感じました。
今後は、プロダクト・家具・インテリアから建築・都市に至るまで、思考とデザインの領域を広げていきたいと考えています。そのために、今回配属が決まった吉村研究室の環境を最大限に生かしていきます。