自分の発明したもので、
より便利で豊かな生活を

総合機械工学科 学部4年
島 聡志Shima Satoshi
現在 大谷淳研究室(元 岩田浩康研究室)
2015年度インタビュー

Q 現在、取り組んでいる研究から教えてください。

「目の開度を入力としたUI(ユーザインタフェース)」の開発です。スマートフォンなどの操作を指先で行うのではなく、カメラなどを活用し、まぶたの開き具合だけで行うことを目指しています。すぐにスマートフォンで動作を実現することは難易度が高いので、まずはパソコン上で作動させて、地図アプリの画面などを拡大したり、縮小したりすることができるソフトウェアを開発し、実現することができました。
この研究には国の機関から研究費がおりていて、本年3月18日に開催されるイベント「Robotics×Future2016」で、試作品のデモンストレーションを行わなければなりません。ですから、今は急ピッチで開発・改良を進めています。

「Robotics×Future2016」
http://www.jst.go.jp/start/event/roboticsxfuture2016.html

Q どのような研究費なのですか?

国立研究開発法人の科学技術振興機構(JST)という機関が行う、平成27年度『大学発新産業創出プログラム(START)』の「技術シーズ選抜育成プロジェクト〔ロボティクス分野〕」に採択されました。STARTとは、大学から新しい産業をつくり出すことを支援するプログラムで、そのなかでも今後、大きく育ちそうな技術の卵に投資しようというプロジェクトに選ばれたのです。応募総数40チームのうち、18チームが採択されたのですが、そのうち早稲田大学は最多の3チームが採択されています。

シリコンバレーで世界最先端に触れる

Q どういったきっかけでこの研究を?

直接的な動機で言えば、自分が使ってみたかったからですね(笑)。混雑した電車内などで、スマートフォンの画面を見ることはできても、手で操作できないことは意外とあるものです。そんな時に、まぶたの開閉だけで操作できたら便利だなと思ったのです。 このような発想の源泉は、㈱オリィ研究所でのインターンシップと、「Silicon Valley Venture Readiness(SVVR)」というプログラムへの参加という2つの経験にあります。
㈱オリィ研究所で、吉藤オリィこと吉藤健太朗さんが製作しているのは、分身として遠隔操作できるロボットです。カメラ・マイク・スピーカーが搭載されていて、ロボットの首を動かせば周りを見渡せ、腕を動かしてジェスチャーをとることができます。ALSなどの難病患者が活用することも想定しています。
大学2年の頃、ここでものづくりに必要な「技術」を学びました。私が取り組んでいる技術も、健常者にはもちろんのこと、難病患者さんにとっても役に立つはずですから、どんどん活用したいと思っています。
一方、NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)とSRIインターナショナル(スタンフォード研究所の世界機関)との共同プログラムSVVRは、技術の種子をビジネスに展開するためのプログラムでした(現在、SVVRはTCP(Technology Commercialization Program)内に組み込まれている)。
私はこれに、大学3年生になる直前に、10歳ほど年長の先輩である渡邉峰生さんたちと参加。私たちがプレゼンした「画像認識を使ってUX(User Experience)を向上させる技術」は高く評価され、わずか3チームにしか与えられない本場シリコンバレーで行われる2週間の研修を獲得することができました。ここでは画像認識の「技術」とともに、「ビジネス」についても学びました。

Q 将来の志望について教えてください。

自分の夢を追いかけるオリィさんの姿を見ていて、またSVVRで事業化について学んだこともあって、将来は起業を志望しています。
ただし、ビジネス面への気持ちが先立つばかりで、まだ研究開発の技術力がついてきていません。とくに学術的な要素が足りないと思っています。技術の裏付けとなる数値がどれだけ正確で信頼できるかなどの部分が必要です。
そのために、一つひとつの経験を大切にし、その中で学べることを最大限に吸収していきたいと思っています。たとえば、実験をやるならば、まず、どのような実験が必要で、その目的が何なのか、どんな目標を立てるべきか、その実験の妥当性は?ということすべて考える必要があるでしょう。そして、データが出たら、このデータをどのように意味づけし評価するか、個人差やばらつきがあれば、どのようなアルゴリズムで対処すべきかを考察しなければなりません。このような過程を通じてより広くて深い知識を身に着けたり、思考の幅を広げたりし、社会に役立つより良いものを作っていきたいと思います。

早稲田の財産は人とのつながり

Q 島さんが考える早稲田のいいところは?

早稲田は先輩も後輩も人数が多いので、あらゆる分野に優秀な人材がいます。また、教員や施設面でも恵まれた環境にあると言えるでしょう。ビジネス面でも早稲田インキュベーションセンター等で起業セミナーが開催されたりもします。ですから、やりたいことがある人は、自分で発信をし、自らの足で動けば、かならず支援してくれる人が出てきます。私にとっては自分をここまで育ててくれた人は、例えばオリィ研究所の吉藤さんや渡邉峰生さんなのですが、もちろん、おふたりとも早稲田出身です。
もしかしたら、まだやりたいことがまだ定まっていない人もいるかもしれません。そういう方は、漠然としていても良いから、自分の興味のあることを周囲に語っておくことです。そうすれば、きっと周囲の人から誘われますから。