コンクリートの劣化を
機械学習を使って予測する

建設工学専攻 修士2年
新谷 美菜 Shintani Mina
2021年度インタビュー

Q 研究内容を教えてください。

腐食した鉄筋コンクリート構造物の劣化の評価がテーマで、どのように劣化していくのかをさまざまな技術と機械学習を使って予測する研究をしています。
通常、鉄筋コンクリートの劣化は定期点検の際に目視で点検し、その情報をもとに劣化を評価していますが、技術者の経験などに頼る部分も大きく、またレベルごとに分類するなどの大まかな評価になっているのが現状です。それをもっと精緻なものにするために、定期点検によって得られたひび割れに関する情報を使って、機械学習などによって内部の鉄筋の劣化度合いまで測れるようにしたいと考えています。

Q どのように検証・効果測定をするのですか?

私たちの研究室では1メートルほどの鉄筋コンクリートを設置して腐食の実験をしています。その研究室の鉄筋コンクリートの劣化度合いと、「ひび割れ」から機械学習を用いて予測した鉄筋の劣化度合いとを比較し、両者を近づけていくという考え方で解析を行っています。これにより機械学習の精度を高めることが期待できます。
ただ実際には、そのまま実験結果を使用するわけではなく、様々な解析によって実験結果に近い性質を持つデータを大量に作って、それらを使用して機械学習のモデルの作成や検証を行っています。研究室でできる実験の数には限りがありますが、機械学習を使うためには大量のデータが必要であるためです。
また、そもそも腐食というのは、コンクリート中の鉄筋が劣化し減ってしまい、全体の強度が落ちてしまうことなので、機械学習で鉄筋の劣化度合いを予測するだけでなく、最終的に構造物の強度がどの程度落ちているのかという評価も行っています。
鉄筋コンクリートの劣化は不確定性が大きい現象ですから、同じ橋の中でも劣化度合いが均一でなかったり、ひび割れの大きさと劣化度合いが比例しないなんてこともあったりします。鉄筋コンクリートのおかれた環境によっても劣化の様子は変わってしまいます。そういったことを考慮しながら、より精緻なモデルを作りだせれば、複雑な構造物の状態をさらに理解できるはずです。

実験で作成したコンクリート

Q 鉄筋コンクリートと機械学習の組み合わせは意外な気がします。

たしかに機械学習というと情報系の学問を思い浮かべる方も多いと思います。しかし、機械学習は鉄筋コンクリート構造物の点検の効率化等にも活用できるので、土木分野においても重要なトピックになっています。
社会環境工学科には必修のプログラミング授業はありませんが、取り組む人も増えているので、専門外のことを勉強する意欲と教員や先輩方のサポートがあれば充分使いこなせるようになると思います。
また、土木で求められる機械学習は主に課題の解決手段として「使うこと」であり、必ずしも新しいものを「作ること」ではありません。ですから、土木系と情報系の両方に興味がある方は、自分の興味がどちらによりあるのかを考えて見て欲しいですね。土木分野で機械学習をどのように活用できるか考えたい人には、社会環境工学科をお勧めします。

社会環境工学科では、
「俯瞰して」ものごとを見られるようになる

Q 社会環境工学科の良いところは

生活に密着したテーマを扱うので、自分の学んでいることが社会とつながっている実感を持ちやすいところが一番の魅力だと思います。街を歩いているだけでも、景観の授業で学んだことが頭をよぎり、橋の上をあるけばその構造が目に留まる。私の場合はコンクリートが専門ですので、毎日至るところで研究対象を見ることができます。そのため、何のために勉強しているのかわからなくなるようなことは少ないはずです。
また、コンクリートの劣化実験は、ものによっては5年後に結果がわかるものもあります。そういうスパンで物事を考えるので、視野というか射程は広くなるかもしれません。
じつは就職先は経営コンサルで、学んだ内容とは直接的には関係しません。でも、研究室のメンバーと協力して実験を進めたり、わかりやすく説明したり、プレゼンテーションしたりといった研究の過程から学んだことは間接的に繋がる気がしたのです。

自分としては視野を広く持って俯瞰してものごとをみるくせを、社会環境工学科で身につけたからこその進路選択だと考えています。

研究室の仲間と