2018.06.05
早稲田大学創造理工学部建築学科の中谷礼仁教授の著作『動く大地、住まいのかたち――プレート境界を旅する』に対して、2018年日本建築学会著作賞が贈られました。
おめでとうございます!
日本建築学会著作賞は、建築学会の会員が執筆した建築にかかわる著書で、学術・技術・芸術などの進歩発展、あるいは建築文化の社会への普及啓発に寄与した優れた業績を上げた著作に授与される賞です。
中谷礼仁教授の著作『動く大地、住まいのかたち――プレート境界を旅する』は、2017年3月、岩波書店より出版されました。
中谷教授は東日本大震災を契機に、日本以外の地震多発地帯では、建物がどのように建てられてきたのかを調べるため、2013年、ユーラシアプレートの境界にある国々――インドネシアからインド、ネパール、イラン、トルコ、ギリシア、マルタ共和国、イタリア、ジブラルタル、チュニジアなどアフリカ北部までを巡歴。
その調査で、中谷教授は地震多発地帯で人間が驚くほどバラエティに富む文化を築いてきたことに驚く一方で、共通点も見出します。
その旅の考察をまとめたのが『動く大地、住まいのかたち――プレート境界を旅する』です。
世界遺産登録でもあるイランのメイマンドには、岩をくり抜いて、石を焼いて作ったレンガを敷いた横穴住居に住んでいる人たちがいました。
一方、ギリシャやイタリアでは、石を積み上げて住居を作ります。
中谷教授はこのような建築の違いはが、その土地の文化や人間性にも影響していると考察。
たとえば、石や土(レンガ)の住居はひとりで作ることができるが、木の家はひとりでは建てられません。
木の家には軸組が必要で、軸組は複数の人が集まって協力しなければ作れないからです。
一方、中谷教授は各地の建築物に共通点も見出します。
その一つは、どんな建物も「大地と縁を切っている」という点です。
大地は人間の熱を吸い取るため、土や石の文化ではレンガが敷かれ、木の家には床が敷かれていて、どの地域でも、人は大地から皮一枚浮かせた空間で暮らしていると中谷教授は指摘しています。
また、地震多発地帯で生き抜く人々の叡智と暮らしを生き生きと写し出すことに成功するのみならず、学術的にも示唆に富む著作として評価されています。
2018年日本建築学会各賞はこちらから。
https://www.aij.or.jp/2018/2018prize.html
中谷礼仁教授の著作『動く大地、住まいのかたち――プレート境界を旅する』に対する授賞理由は以下をご覧ください。
https://www.aij.or.jp/images/prize/2018/pdf/4_award_003.pdf
日本建築学会が作成した『動く大地、住まいのかたち――プレート境界を旅する』紹介動画は下記になります。
https://www.youtube.com/watch?v=P89rtEkUNVE
『動く大地、住まいのかたち――プレート境界を旅する』
https://www.iwanami.co.jp/book/b281685.html
中谷教授の「創造人」は下記からご覧ください。
http://www.cse.sci.waseda.ac.jp/contents/wp-content/themes/cse/img/pdf/no7.pdf
早稲田大学 中谷礼仁建築史研究室はこちら。
http://www.nakatani-seminar.org/