学生時代に学んだことは、
ひとつも無駄にならない

東京電力ホールディングス株式会社
技術戦略ユニット 土木・建築統括室
土木・建築エンジニアリングセンター都市土木技術グループ
篠口 冴子 Shinoguchi Saeko
2016年度 建設工学専攻修了
秋山研究室
2021年度インタビュー

Q お仕事の内容を教えてください。

東京電力ホールディングスで技術開発や技術支援の仕事をしています。と言っても、研究所で基礎研究をやるような職種ではなくて、当社の管理する設備建設や維持管理のための技術開発がメインで、現場のお困りごとを技術でサポートする「現場に近い」仕事をしています。
具体的には当社の管理する電力ケーブルを収容するトンネルやマンホールなどの土木構造物を担当しています。築年数の経っている構造物が多く、中には50年以上経過しているものもあります。これらを合理的に維持管理するための点検方法や補修方法, 耐力の評価手法などの開発をしています。
入社してみて驚いたのは任される範囲が広いこと。計画立案から社内外関係者との調整など、研究業務全般を主体的に実施しています。若いうちから活躍したいと思う人にはおすすめですね。
昨今、求められるのはなんと言っても作業の効率化。今注目されているDXも積極的に進めています。私が昨年研究業務として取り組んだのは、ドローンとAIによる設備の点検です。これは、人力で簡単には点検できない設備をドローンによって撮影し、その撮影画像をAIに学習させて、ひび割れの度合いを判定する仕組みです。これまでは実際に人が赴いて撮影や検査をしていたわけですから、作業に危険と時間が伴いましたが、安全かつ効率的に作業できるようになるはず。実用化に向けて検討中です。
また、業務内容とは違いますが、ほぼ100%テレワークをしているというと驚かれます。私のような土木の技術職では、なかなか難しいところも多いようですが、そのあたりの対応も進んでいますね。

責任感をもって仕事をするための基礎を学んだ

Q 秋山研究室で学んだことは

秋山研究室では橋脚の維持管理のために、非破壊で構造物の損傷を見つけるための研究をしていました。地震等の作用により損傷を受けた場合、構造物の高さや剛性によって、振動の大きさが変わってくるのですが、それを加速度センサーで計測しました。損傷前の健全なコンクリート供試体と損傷を受けたものの固有周期を比較して劣化度合いを評価するのです。
この研究で感じたのは、自分で手を動かしてみないと何もわからないということ。たとえば、実験に使う供試体を自分で作ったり、実験の設備も自分でセッティングしたりするところまでやって初めて実験の効果を保証できるのです。
この時の経験から、何事も自分が納得するまで確認する習慣がつきました。今の仕事では、実際に実験や解析で手を動かすことはあまりないのですが、例えば、協力会社から検討結果が上がってきたら、自分でも計算したり、検討方針を提案するなどして、人任せにしないことは徹底しています。責任感を持って仕事をするための基礎を学んだ気がします。

Q 社会環境工学科を目指す方に一言

OBOGの方は皆さんおっしゃるかもしれませんが、「もっと勉強しておけばよかった!」と思います笑。仕事中はいろんなところで、土木用語や専門用語が飛び交っているのですが、「聞いたことはある気がするんだけれど、ちょっと意味はわからないな」ということが結構あるのです。教科書に書いてあるような基礎知識は、授業をしっかり受けて学んでおくことに越したことはないです。
将来は「技術で人を巻き込んでいく人」になりたいと思っています。入社してすぐにトンネル工事に携わったのですが、ものすごく多くの人が関わっていました。その中で自分の意見を伝えるのはとても難しかったのですが、そのベースとなるのは技術力でした。コミュニケーション能力や交渉力のような単に人を巻き込むためのスキルも重要ですが、私たちは技術者なので、根本には技術で人を納得させる力を持たねばなりません。
学生はその基礎の部分を培う期間なので、私のようにもうちょっと勉強すればよかったとならないように頑張ってください笑。