早稲田のネットワークを
最大限に活かしてほしい

早稲田大学環境資源工学会会長/双日マシナリー株式会社 執行役員
川﨑 秀憲 Kawasaki Hidenori
2020年度インタビュー
1982年 3月 早稲田大学理工学部資源工学科 卒業
1982年 4月 ニチメン株式会社 入社
1991年10月 ジャカルタ駐在員事務所
2001年 1月 米国ニチメン ニューヨーク プラント部長
2001年 6月 東京本社 機械カンパニー 風力・通信チーム
2003年 4月 ネクスネット株式会社に転籍
経営企画部長 兼 マーケティング部長
2009年 6月 双日マシナリー株式会社 入社
2019 年6月 執行役員 重工プラント本部長

Q 環境資源工学科のOB・OG会の会長でいらっしゃいますね。

早稲田大学環境資源工学会は卒業生相互の親睦、そして学科の後援を目的として1968年に設立された歴史あるOB・OG会です。これまでの校友は5000人近くにも及びます。
2010年に前々会長の前川統一郎氏と大和田秀二先生が同窓会としての組織を整備されました。そして2019年6月、なぜか私にお声がかかり、山﨑次郎前会長から会長職を引き継ぎました。私は資源工学科(現・環境資源工学科)を学部卒業して総合商社に入社し、その後は早稲田大学との繋がりはありませんでした。しかし、会社の先輩からのお誘いで環境資源工学会の運営を手伝うようになったことから、会長の職を任されることになりました。
年に一度の総会で同期に会うと若い頃の記憶が蘇り、若手OBと懇親するとその頼もしさに胸を打たれます。こんな風に早稲田との絆が深まるとは、予想していませんでしたね。

商社の仕事は人の話を
しっかり聞くことに尽きる

Q 商社でのお仕事について教えてください。

資源工学科を卒業し、ニチメン(現・双日)に就職しました。当時、修士に進学するのは3分の1程度で、学部を卒業して就職するのは珍しくありませんでした。メーカーへの就職を考えていましたが、友人が総合商社を受けるというので、興味本位で私も受けてみることにしたのです。するとニチメンから内定が出たので、そのまま就職することに。
「資源科卒だから、きっと資源系の部署に配属されるだろう。駐在員になって、海外で資源を獲得して日本に貢献するんだ」。そんなロマンを胸に抱いて入社しましたが、実際に配属されたのは資源系ではなく機械系の部署でした。
そこでは東南アジアに石油コンビナートや発電所、製紙工場といったプラントを輸出する業務を担当しました。足掛け15年近く携わりましたが、その間にインドネシア、フィリピン、タイ、ベトナム、ミャンマー、東南アジアのほぼ全ての国に長期に滞在しました。
この中で特に好きなのはミャンマーですね。私が行った頃は軍政権下で物々しい雰囲気でしたが、仏教に根ざした文化や、勤勉実直な国民性がとても気に入りました。英語が公用語なので、コミュニケーションがしやすかったことも好きな理由の一つです。

1999年頃、ミャンマーのヤンゴン事務所にて

海外勤務時代に発給されたビザ(左:ベトナム、右:ミャンマー)

東南アジアだけでなく、アメリカのニューヨークに勤務したこともありました。長い期間ではありませんでしたが、ダイナミックなアメリカ流のビジネスに衝撃を受けました。パワーブレックファストといって、高級ホテルで取引先と山盛りのステーキを食べながら商談するのです。この馬力には、正直敵わないと思いましたね。
仕事をしてきて感じるのは、商社の仕事は決して派手ではないということ。海外を飛び回るイメージとは裏腹に、その仕事の核はとにかく「人の話をしっかり聞く」。これに尽きます。
商社は自前の商品を持っていません。だから売り込むのは人間性。信用してもらうことが仕事のようなものです。そのためには相手に心を開いてもらわなければなりません。
相手の話を聞き、理解し、その奥にあるシグナルのようなものを感じとる。そのためには、英語や現地の言葉をはじめとする外国語のスキルや、経済、法律、さらには最近ではコンプライアンスに至るまで、幅広い知識を身に付ける必要があります。
特別なことではありませんが、これがすべての基本です。たとえ国や人種が異なっても、一人ひとりに向き合うことは変わりません。商社で働いていると、ビジネスだけでなく、一人の人間として鍛えられている実感があります。

早稲田の理工卒は踏ん張りがきく
OB・OGのネットワークを活用してほしい

Q 早稲田生にメッセージを。

現在は人を採用する立場ですが、そこで感じるのは早稲田の理工学生の優秀さです。早稲田の学生は、社会に出てから「踏ん張り」がきく人が多いように感じます。シンプルに言えば、不条理に耐える力がある。その源泉は学問を頑張ってきたことにあると思います。
若い人たちに言いたいのは、周りの先輩を頼ってほしいということ。早稲田は人が多い大学ですから、どこに行っても必ず先輩がいるはずです。それは決して損なことではありません。ネットワークの一つとして、ぜひ早稲田大学環境資源工学会を活用してください。