新規事業開発を専門に、
コンサルティング業界で活躍

アーキタイプ株式会社 取締役 Lead Business Architect /
株式会社AirX 経営企画
阿部 傑Abe Takashi
経営デザイン専攻 2013年修了
大野研究室
2023年度インタビュー

Q お仕事の内容を教えてください。

 アーキタイプという会社で新規事業開発に特化したコンサルティングに従事し、取締役を務めています。
 担当するクライアント企業によって業務の進め方はさまざまです。顧客企業の社内で新規事業を公募するような新事業創出プログラムの企画・運営サポートや、伴走型で新規事業開発を一緒になってやっていくこともあります。
 最近増えてきているのが、オープンイノベーション型。これは企業同士をつないで、それぞれの強みを活かして事業を創造していく試みで、注目を集めています。

Q アーキタイプで働くきっかけは

 新卒ではデロイト・トーマツコンサルティングに入社したのですが、その時に関わった案件のなかでは、新規事業開発が特に面白かった。5年程在籍していたのですが、その頃には、そろそろマネジメントを任されるようになってきます。そうなると、自分の専門性は何か? ということが問われるのです。人によって、サプライチェーンならこの人、M&Aならこの人、この顧客のことなら任せて、とそれぞれが専門性を身に着けていく中、私の場合は新規事業開発を専門性にしたいと考えていました。
 そんな中で会社に求められることとのズレが出てきたタイミングで、新事業開発を専門にしているアーキタイプから声がかかったのです。

Q 新規事業のやりがいは

 世の中に新しい価値を提供したいというクライアントの想いが見えやすいのが一番かなと思います。規模の大きい既存事業改善の方がインパクトは大きいかもしれないけれど、立ち上げだからこそ、得られるものが大きいと感じます。
 また、「何か新しいことをしたい」人が集まってくるので、現場がポジティブなことが多いのも魅力です。
 正直、業務改善プロジェクトの場合は、そのプロジェクト自体を良く思っていない人がいることもあります。そんなジレンマは比較的少ないかもしれません。

スタートアップを支援してきた心意気が評価されている

Q 顧客はどのような企業が多いのですか?

 現在は所謂大企業の顧客がほとんどです。2006年の創業当時は、大企業の新規事業開発のサポートと、スタートアップへの投資とサポートの二軸で業務を展開してたのですが、現在はスタートアップへの支援部分は切り分けて、グループ会社のベンチャーキャピタルが担当しています。
 仕事を受注するためには、多くの場合、コンペを勝ち抜く必要があるのですが、相手は大手ばかり。少数精鋭のわれわれを選んでいただくのは、スタートアップを含む新事業開発の経験と実績をご評価いただいていることが多いと感じます。つまり、スタートアップ投資から始まった会社なので、新規事業に対する知見が多いということと、コンサルティングだけでなく自ら投資をしてまで新たな事業を支援する心算があるというところに、魅力を感じていただいているようです。

Q 新規事業を軌道に乗せるコツはなんですか?

 この分野に正解はない。一緒になって必死に考えていくしかないと思っています。ただ、顧客は、当然自らの技術や強みは熟知しているわけですが、それ故に提供者目線になっていることがあります。
 我々にできるのはその部分を、お客様=受け取る側にとってどのような価値があるのかを示すこと。過去の事例や自分たちの担当してきた案件はもちろん、さまざまなデータを駆使します。
 この問題解決のやり方、手法は大学で学んだことが生きているように思います。特に4年生から修士を出るまでの間に2回論文が書けたのは経験して良かったと思います。自分で研究テーマを決めて、問題解決に取り組んでいくのは、仕事はもちろん、人生の助けになっています。

Q 印象に残っている授業はありますか?

 プロジェクトベースドラーニングの授業で、OBでアクセンチュアの社長をされていた村山徹先生から指導を受けたことが印象に残っています。仮想プロジェクトで、チームを組んで課題解決をしていく授業でした。
 学生なのでもちろんプロのコンサルタントとレベルは違いますが、今やっていることと、そう遠くないと感じています。学生あつかいせずに、厳しく指導していただいたのもありがたかった。その頃からコンサルティング業界に興味を持ちはじめました。

早稲田時代の友人のスタートアップに参画

Q 早稲田時代の同期とのつながりは

 実はAirXという企業に経営企画として参画しています。これは経営システム工学科の同期が起業したスタートアップで、エアモビリティプラットフォームの構築・運営をする企業です。現在はヘリコプターを中心にサービス提供していますが、将来的にはeVTOLと呼ばれるいわゆる空飛ぶクルマを活用した事業も展開しようと事業開発中です。
 空飛ぶクルマというと、遠い未来の話に感じるかもしれませんが、2025年頃には実用化も期待されていて、技術的にはかなり精度の高いものになっています。
 社長とはもともと学部時代に同じ授業を受けたりして、仲が良くつながりがあったのですが、私が新事業開発のコンサルティング業界にいるということで、誘ってもらいました。スタートアップとして事業は軌道に乗ってきてはいるけれども、経営管理の部分で手が回っていなかったり、中長期の目標や、ミッション、ビジョン、バリューと呼ばれる理念の部分をサポートしてきました。

Q 経営システム工学科/経営デザイン専攻の良いところは

 もともと理系ではありつつも、アカデミックというよりはビジネスに深く関われるような学科を探していて、経営工学が学べるということで自然に行き着きました。 建築とか情報とか物理とか、これを技術的・学問的に極めたいというものが見つかっていないのであれば、経営工学に関して幅広く学べる経営システム工学科はやりたいことが、見つかりやすい学科なのかなと思います。
 早稲田経由で長期のインターンを経験したことがあったのですが、今考えるとすごく実践的な内容でした。友人から学生インターンの感想を聞くと、実際に働くのとは別物という人が多いのですが、ほとんど業務と言ってもいいくらいで、実際のクライアントプロジェクトに参加させてもらう経験ができました。その経験も現在のキャリアであるコンサルティングにつながっています。
 実務に近い経験がしたいのなら、経営システムや経営デザインは特におすすめです。