カーボンネガティブコンクリートの社会実装へ
ーーインフラを技術で支える人でありたい

社会環境工学科 学部4年
海崎 真穂 Kaizaki Maho
秋山研究室
2022年度インタビュー

十分な機能を果たすための実験と検証

Q 現在取り組んでいる研究について教えてください。

カーボンネガティブコンクリートについての研究に取り組んでいます。従来コンクリートはその製造過程で大量のCO2を排出し、環境的な視点から課題となっていました。カーボンネガティブコンクリートは、製造過程で排出されるCO2を減らすだけでなく、CO2を吸収した素材を混ぜ合わせることで、CO2の排出量を実質ゼロ以下に抑えたものです。

なかでもこの研究では、CO2を炭酸マグネシウムとして吸着し、素材として配合する、新しいソレルセメントの開発に取り組んでいます。原料となる炭酸マグネシウムの生成は、総合機械工学科の中垣教授が開発を進めている独自の取り組みです。
https://www.waseda.jp/top/news/85546

一方私の研究では、コンクリートとして十分な機能を果たすために、さまざまな添加剤を配合し、最適な組み合わせや割合を導き出す検証に取り組んでいます。コンクリートとして活用するには、圧縮強度や耐水性、凝結時間といった観点から、十分な基準を満たさなければなりません。例えば凝結時間は、コンクリートを打設するために、配合後2時間は柔らかい状態を維持しなければなりません。

実験では、実際にセメントから小さなコンクリートの円柱を作り、圧縮試験機で圧縮してその強度を調べるほか、硬化反応が終わった後一定期間水中に入れて、その前後の強度の変化についても検証しました。

こうした検証を繰り返し何度も行うので、毎日なにかしらの実験に取り組む日々を過ごしています。1つの実験でも材料の練り混ぜから、養生の期間、圧縮試験など、さまざまな作業が絡んできます。材料の管理が行き届いておらず実験できないこともあれば、使用する実験室の貸し借りなど、計画立てや調整にも一苦労しました。

留学生とのチームワークで研究に取り組む

Q 秋山研究室を選んだ背景について教えてください。

構造系の研究のなかで、とくにコンクリート構造物に魅力を感じていました。その上で先生の講義を受けたり、研究室の様子を見たりして、秋山研究室を選びました。秋山研究室ではグループで1つのテーマに取り組むので、先輩や同期と一緒にディスカッションしながら研究ができるということも魅力です。

私のグループは学部生、修士、博士、助教授が所属しており、また私以外は全員留学生でした。日本語と英語が入り混ざったなかで、研究に取り組むところも、面白いと感じています。チームのメンバーとは、ジョークを交えたコミュニケーションでより良い関係性を築いています。

秋山研究室では、多くのチームがコンクリート生成の実験に取り組んでいて、その作業には人手が必要です。その時は他のチームも合わせて、研究室のメンバーが一丸となって、チームワークで取り組んでいます。

研究室の仲間と

Q 大学生活で楽しかったことについて教えてください

登山サークルで活動しています。北アルプスをはじめ雪山や岩場がメインの山にも登りました。大学生のうちにこうした山に挑戦できたことはよかったと思います。また全学サークルなので違う学部や学科の人とも交流できます。OB会というのもあって、OBが登山の計画をサポートしてくれるなど、普段話さない人ともつながることができ、楽しい思い出になりました。

登山の思い出

常に当たり前にあるインフラを技術で支えたい

Q 今後の展望を教えてください。

修士に進んで研究を続けます。来年度の研究では、これまで化学会社から購入していた材料を、中垣研究室で実際に生産されたものに代えて研究を進める予定です。また、これまでは数ヶ月単位のコンクリート強度しか調べられていませんでしたが、年単位の長期間保存した際の挙動の変化を調べようと思います。さらに、現状のソレルセメントはpHの関係から鉄筋との相性が悪いため、利用法の応用を考え、道路舗装や鉄筋を使わないFRP構造物などで使用するための検証にも取り組む予定です。

将来的にも土木に携わり続けたいと考えています。社会が目まぐるしく変化するなかでも、インフラは人間が生活する限り必要であり、その安定性を確保することが重要です。インフラは災害などの有事の際に壊れ機能しなくなってから注目されがちですが、有事の際にも当たり前に存在し続けるように、それを支えられるような仕事に取り組みたいです。学生であるうちは社会に対する影響力もなく、無力さを感じることもありますが、将来的には平時から技術的に何かしらの手を打てるような人になりたいです。