早稲田のゼミは、相互作用で
ブレイクスルーを起こす

経営デザイン専攻 修士1年
原 友美Hara Tomomi
大野研究室
2018年度インタビュー

Q どのようなことを研究されているのですか。

シミュレーションを用いて、クラウドファンディングの支援者が増加する様子を分析しています。クラウドファンディングとは、一般消費者(Crowd)が事業者のプロジェクトに投資することができる資金調達(Funding)の仕組みです。
私が注目しているのは、クラウドファンディングにおける支援者同士の相互関係です。プロジェクトで提供される製品やサービスへのニーズが強い人でも、性格によって積極的に支援する人としない人がいます。ほかには、一人目の支援者になるのは怖いけれど、周りに支援者が多ければ支援してみたいと考える人もいます。このような性格の違いを加味して分析することで、事業者が支援者を増やすにはどのような対策を取ればよいかわかってくるはずです。

相手をはっきりイメージするからこそ、
社会に役立つ研究ができる

Q 経営デザイン専攻の特色は?

研究室の垣根を超えた、合同指導体制が挙げられます。最大の特徴は、普段のゼミのほかにある「合同ゼミ」です。経営デザインの全教員が分野の垣根を超えて一堂に会した中で研究発表が行われます。元コンサルタントや製造業での実務経験のある教員が在籍しているので、実践的なアドバイスをいただいたり、今まで想像もしなかった切り口からの問題提起を得られたりします。自分の研究を事業プロセスの中で具体的に想像することができて理解が深まるのもメリットです。
このとき質問されるのは、要するに「この研究は誰のためになるのか」ということ。経営工学は事業の浮き沈みに直結する学問だからこそ、相手をはっきりイメージし、社会に役立つ研究をする必要があるのです。

Q 学部生のチューターもされているとか。

学部生が作成したプレゼン資料を添削したり、卒業論文に行き詰まった時には相談に乗ったりしています。学部生への指導を通じて研究のヒントをもらうこともあり、大変よい刺激になっています。
チューターを担当している学生に、Twitterのインフルエンサーについて研究している人がいます。インフルエンサーはフォロワー数が多い方がより影響力があると思われがちです。ですから、企業はフォロワー数の多いインフルエンサーを広告塔に起用しがちです。しかし、いいねやリツイートといったエンゲージメントを分析すると、フォロワー数よりも普段のコミュニケーションや、ニッチな専門知識といった要素が広告効果を決める可能性があるとわかってきました。この学部生の研究が、クラウドファンディングにおける「支援者は宣伝者でもある」という視点を得ることにつながりました。学部生とのやりとりを通じて、大学院生の研究も改善されていくところが、チューター制度の大きな長所だと思います。

クラウドファンディングの研究に
避難訓練の行動モデルを応用する

Q 研究で大変なところはどんなことですか。

そもそも私の研究は最新事例を扱っていることもあり、先行研究が少ないのが現状です。ですから、クラウドファンディングにおける支援者の行動モデルと似た特徴を持つ別の行動モデルを代用する必要があります。これはある種のひらめきが必要にある作業です。なぜなら、どの分野の論文が役立つか、実際に読んでみないとわからないからです。
研究当初は経営工学の分野で応用できそうな論文がなく、困っていました。しかし、ゼミで先生や学部生と会話しているなかで、視点をもう少しズームアウトして「人と人の動き」そのものに着目するのはどうかと思いました。クラウドファンディングと同じように、誰かに感化されて同じことをする行動モデルを地道に調べた結果、避難訓練における避難者の行動について研究した論文にたどり着きました。
避難時の切迫した状況下では、とっさの判断が生死を分けます。意外に思われるかもしれませんが、避難者の動き方や意思決定の特徴が、クラウドファンディングの支援者の分析にも応用可能なのです。自ら進んで支援者となり情報発信する人や、周りに支援者がいるなら自分も支援しようと考える人々の動きを、別の研究分野も参考しながら分析するのです。

さまざまな価値観に触れる
濃密な学生生活を送れる

Q 早稲田大学の良さをおしえてください。

多様性を重んじる大学だと思います。突然海外留学に行ってしまう人がいたり、いつの間にか起業している人がいたりと、各自が学生生活を満喫しているイメージですね。私は就職を考えていますが、先日もインターン先で他大学の人とグループワークをしたとき、異なる考えを受け入れて進めることができました。多様な価値観に触れてきた経験が役に立ったと思います。同じ大学生活でも、早稲田大学はさまざまなキャラクターの人に出会える分さらに濃密ですよ。