ほんとうに大変な地域で、
役立てる人材になりたい

社会環境工学科 学部4年
牧野 侑太朗Makino Yutaro
山﨑研究室
2015年度インタビュー

Q 社会環境工学科に入ったきっかけを教えて下さい。

もともと僕の住んでいる練馬区や、その隣の杉並区あたりはゲリラ豪雨が多く、日頃から自然災害に興味を持っていて、高校の卒業論文では、練馬区のゲリラ豪雨の原因を調べました。
調べた結果わかったのは、ゲリラ豪雨の原因は人為的な環境要因によるところが大きいということでした。
その時に「だったら、むしろ人の手で解決できるのではないか」と思い、社会環境工学科に進むことを決心しました。

Q 実際に入ってみていかがですか?

個人的には、思っていたのとは違う部分もありました。たとえば、自然災害をなくすための根本的な対策を学ぼうと思っていたのですが、対処療法的な対策の研究がほとんどでした。ゲリラ豪雨という現象を少しでもなくすための方法よりも、河川をどう整備するかということですね。
ただ、それ以上に興味深い学問を学べたことも確かです。橋梁や構造物を建てる上での基礎的な考え方を知ることができたのはいい経験でした。

国内外で防災教育を行う

Q サークル等はやっていますか?

昨年までWASEND(早稲田大学防災教育支援会)という団体で代表を務めていました。この団体は、社会環境工学科直属のものです。昨年退官された濱田政則先生の呼びかけに応じた学生たちを中心に設立されました。
WASEND設立のきっかけは、2004年に起きたスマトラ島沖地震でした。
途上国では、住民の自然災害に対する知識が不足していることで、被害を増大させてしまうことがあります。残念ながら、スマトラ島沖地震でもその影響が出てしまいました。濱田先生は、日頃の防災教育の重要性を訴え、学生たちはその使命を担おうと、WASENDを設立したのです。

Q WASENDでは具体的にどのようなことをされているのでしょうか。

国内外を問わず、災害の多い国・地域に行って、子どもたちに防災教育を行ないます。内容は大きく分けて2つあり、ひとつは津波や地すべりなどの現象をメカニズムから説明すること、もうひとつは災害時に危険を避ける方法を伝えることです。
国内では首都圏のほか愛知県と愛媛県に行き、小学校や自治体の防災イベントで主に活動を行っていました。国外ではインドネシアに行ったことが特に印象に残っています。自分の目で見て、現地の方々の話を聞けたことにより、いろいろと考えさせられて、いい経験になりました。

Q インドネシアではどのようなことを考えたのですか?

僕たちはインドネシアの小学校で防災教育を行ったのですが、インドネシアでは地域によってまだ貧富の差が激しく、子どもたち皆が小学校に行けるわけではありません。つまり、貧しい家庭の子どもたちには、防災の意義を伝えることができませんでした。
でも、実際に災害が発生したときに最も影響を受けるのは、経済的に貧しい人たちであり、小学校に通えない子どもたちなのです。それなのに、どうしてその彼らに伝えられないのだろうか。こんなことをやっていて意味があるのかと僕なりに悩みました。
その一方で、富める人たちは不必要と思えるような開発を続けています。これを見た時に「社会基盤を作ることが本当に人々の生活を豊かにするのだろうか」「もっと他に大切なことがあるのではないか」と考え込んでしまったのです。
もちろん、これは極端な考えだと思います。現代社会において、社会基盤が必要ないということはありません。
それに気づかせてくれたのも、海外での経験でした。ベトナムのホーチミンで地下鉄建設の現場見学をしている時に気づいたのです。当地の道路は、車やバイクで溢れかえっていて、環境問題の視点から見ても、あまり良い状態とは言えませんその状況下で地下鉄を建設することは、将来的にも住民の生活をとても良くするはずです。このことに気づき、また研究への意欲を新たにしました。