人と環境
その円環関係を支える研究を

環境資源工学専攻 修士2年
2015年度インタビュー
細田 幸佑Hosoda Kohsuke
大和田研究室

Q どんな研究をされているのですか?

鉱石を粉砕して、有価鉱物だけを個体のまま分離選別する「浮選」の研究をしています。鉱物には、表面が親水性のものと疎水性のものがあります。疎水性であれば、水に懸濁させてバブル(気泡)を入れると、鉱物が気泡に付着して水面に上がってきます。「浮選」は、こうした鉱物表面の特徴(濡れ性)をうまく利用した分離技術です。
開発が進んだ今、世界に残っている鉱山の多くは、銅を例に取ると含有率1%以下と、有価鉱物の含有率が極めて低い状況です。そのため、従来は鉱石を数十~数百ミクロン(数十~数分の1ミリ)程度に粉砕するのが主流でしたが、現在は有価鉱物だけを単体分離するのに20ミクロン以下の微粒子にまで粉砕しなければならないことがあります。私が所属している大和田研究室は、こうした微粒子の処理に特化した「マイクロバブル浮選」研究の日本における草分け的存在の一つです。
私は、いまだ経験則に基づいて行われることの多い「マイクロバブル浮選」をより高度化・効率化するため、基礎理論の確立をめざす研究に取り組んでいます。

Q 研究の難しさは、どんな点にありますか?

鉱物が水中でバブルに付着するメカニズムを解明するには、固体(鉱物)・液体(水)・気体(気泡)という3つの物性の相互作用を考慮しながら界面現象のプロセスを明らかにしなければなりません。個体の粒度、形状、密度、電気的・磁気的特性、光学的特性、表面ぬれ性、化学組成など、様々な特性を踏まえつつ、流体力学、化学、物理学など、幅広い知識をもって総合的に考察する必要があります。大和田先生はよく「資源工学は総合工学である」とおっしゃっていますが、それがまさに、この分野の面白さでもあり、難しさでもあります。学部の時は、この学問は資源とどんな関係があるんだろうと首をひねることもありましたが、いざ研究に入ると意外なほどつながります。昔の教科書を引っ張り出してきて見直すことも度々あります。

Q この領域に興味を持ったきっかけを教えて頂けますか?

身校(早稲田大学本庄高等学院)がスーパーサイエンスハイスクール指定校で、レアメタルのリサイクルについて学ぶ機会があったのです。今後ますます大切になるに違いないと、夢を感じました。
そこで、天然鉱山の分離選別技術をリサイクルの分野にも応用し、都市鉱山(廃棄物)から有価金属等を分離選別する技術について先駆的に研究している大和田研究室の門を叩きました。リサイクルと言っても、分離選別の仕方によっては、逆に環境負荷が増えてしまうようなケースもあります。環境に調和できる資源循環のあり方を探るには、基礎的な理論をしっかりとつめていかなければ…という思いがあります。

人間と環境 それぞれの営みが活かされるために

Q 早稲田の環境資源学科の特徴は、どんな点にあるのでしょうか?

「環境」と「資源」という2つの学問領域が、縦割りにならずバランスよく円環している学科だと思います。自然環境は人間と切り離されて存在しているわけではありません。人間もまた、資源を利用した産業なしに生きていくことは不可能です。両方の分野をバランスよく学ばないと、本質的な課題解決の道が見えてこないと思うのです。
大切なのは、サイエンスの視点と経済・産業の視点を、どう折り合わせていくかという点です。その探求には、専門性を高めていく一方で、接点のある領域を総合的に見渡す視野の広さが武器になります。早稲田の環境資源学科には、多種多様な研究室があり、研究室一つとっても、多少のことでは驚かなくなるほど個性的な人たちが集まっていますので、研究の可能性は無限大の広がりがあると思います。
入学前の段階では、「自分は何がやりたいか分からない」という人も多いかもしれませんが、頭の中だけで考えるのではなく、色々な授業にじかに足を運び、手を動かしていく中で、ピンと来るものが必ず見つかると思います。

Q 切磋琢磨しながら研究に励む風土があるのですね。

研究は、みんなに意見を求めながら、協力して進めていくもの。1人きりでは出来ません。大和田研では、議論をとても大切にしています。そのため、朝10時から17時をコアタイムとして、全員が顔を合わせる時間を設けています。
自分がやりたい研究をするためにも、先生に納得してもらえるよう、意見はしっかりとぶつけていきます。自主性を尊重してくれるので、とてもやりがいがありますよ。OB・OGの方々と共同研究する機会もあり、タテ・ヨコの温かいつながりが良き伝統だと思います。

Q 最後に、将来の夢をお聞かせ下さい。

今まさに就職活動中なのですが、知的好奇心の広さを活かしつつ、産官学をつなぐ架け橋として社会に貢献できる人材になりたいです。