研究室で学んだのは、
正解のない問題に取り組む姿勢

建設工学専攻 修士2年
原田 恵多Harada Keita
榊原豊研究室(水環境工学)
2017年度インタビュー

Q 社会環境工学科を選んだのは?

志望したきっかけは、まちづくりに興味があったからです。子どもの頃、父の仕事で海外で生活することがあったのですが、一つとして同じ街並みはなく、どの国でも独特な雰囲気がありました。そんな勉強ができればと漠然と考えていたのです。
ところが、実際に入学して「都市計画」の授業を受けてみると、あまり得意ではないことがわかりました。都市計画では自分のつくりたい街を言葉で表現しなければなりません。豊富な語彙力や言葉の正確な定義が求められます。文系科目はあまり得意ではなかったので、都市計画を専門にするのは断念しました。現在はASEANの下水インフラの構築などにも携わっていて、国際的な視野を持つ榊原豊教授の水環境工学研究室に所属しています。

Q どのような研究をされていますか。

汚染土壌を浄化する方法を研究しています。かつてベトナムでは、ベトナム戦争で使われた枯葉剤が土壌を汚染し、その土壌が生物に吸収される過程を通じて濃縮(生物濃縮)することで、人体にも影響をもたらしました。現在はそれほどではないものの、まだ汚染土壌は残っていますし、農薬などの汚染土壌もあります。
こうした汚染土壌は超高温で燃やすことによって、浄化することが可能です。ただ、それには巨大なプラントが必要とされるなど、莫大な費用がかかるため、開発途上国では現実的に難しい。そこで低コストで汚染土壌を浄化する方法がないかと考えて、榊原研究室では植物を使った浄化技術を研究しています。

Q 具体的にはどのような技術なのでしょうか。

植物を使った土壌浄化技術の名前は「Phyto-Fenton法」です。植物は光合成の際、漂白剤や殺菌剤の原材料にも使われている過酸化水素を産生します。この過酸化水素に鉄材料を反応させると強力な酸化力を持つヒドロキシラジカルが発生(Fenton反応)し、有害物質を分解できるのです。この反応でダイオキシンも分解できます。
榊原研究室でこの研究が始まったのは昨年からで、今はまだジャム瓶くらいの大きさで経過観察している状態です。今後、汚染土壌を何パーセント浄化できるのか、汚染物質をどこまで分解できるのかなどの調査や、ジャム瓶からもう少し広い範囲でも実験・観察を行うことを考えています。

Q 研究で大変だったことは?

勉強と研究との違いは「正解」があるかどうかといわれることがあります。勉強には正解がありますが、研究に正解はありません。自分で問題を設定し、自分で解くものなのです。この正解のないことに取り組むこと自体が最初は大変でした。
研究室に入った時、榊原先生から与えられた課題は「ASEANで最適な下水インフラを考えたい」というものでした。最初はとにかく手探りで、ASEANの下水インフラの状況を調べて先生に報告するだけ。つねに「これでいいのだろうか」と不安でした。ですが、先生は調べてきたことに対しては的確に反応してくださったので、その積み重ねで「これでいいんだ」と思えるようになり、徐々に自信をもって調査研究に取り組めるようになりました。
実社会では、正解のない問題に取り組むことの方が多いはずです。そんな課題に向き合った時でも、自分で導き出した答えに自信があるなら、それをしっかり主張する必要があります。榊原研究室で学んだことで、社会に出ても臆せず、何事にも積極的に取り組む自信が少しは身についたと思っています。

多様な人材を育む土壌が
早稲田大学の大きな魅力

Q 将来の進路を教えてください。

修士課程修了後はJICA(国際協力機構)に就職する予定です。開発途上国への国際協力を行う機関で、日本の政府開発援助を一手に担っています。
JICAは開発途上国の貧困対策や教育援助などとともにインフラ輸出なども行っているので、社会環境工学科で得た知識を活用できると思うのですが、今のところ、それよりも海外を転々として、たくさんの国の人々と国際交流を楽しむことができればと考えています。たとえば、昔から続けていて、早稲田でもサークルでやっていた野球を通じて交流できれば嬉しいですね。

Q 早稲田大学の良さはどこにあると思いますか。

受験生だけではなく、付属校出身の学生や、推薦で入学した学生など、さまざまな学生がいるところだと思います。国立大学ではなかなかいないユニークな人がたくさんいます。やりたいことを最優先にする人が多いからかもしれません。僕の周りでも、とにかく旅行好きで、授業や研究が忙しいのに、隙を見つけてはインドやら、東南アジアやらにバックパッカーで旅行に行く人がいます。
あとは留学生の多さも魅力です。榊原研究室でも、中国人が3~4人いて、ほかにインド人がいて、三分の一を留学生が占めていた時期がありました。日本人か否かにかかわらず、いろんな人と交流できます。
このようなところで成長し、羽ばたいていきたいと思うかたは、ぜひ入学してほしいですね。