金属リサイクルの研究を見すえ
多分野まで関心を広げたい

環境資源工学科 学部3年
小川 貴大Ogawa Takahiro
大和田研究室
2018年度インタビュー

Q 環境資源工学科を志望した理由を教えて下さい。

環境保全と資源開発を同時に扱うところに魅力を感じたからです。例えば、金属リサイクルでいえば、金属部品が使用された廃棄物を効率的に処理する「環境問題」を扱うと同時に、製品に使用された金属部品を市場で循環させる「資源問題」を扱う側面もあります。環境と資源は別物と考えている方もいるかもしれませんが、互いに密接に関わり合っているのです。

リサイクルの一番の魅力は
廃棄物を資源として蘇らせること

Q 金属リサイクルの分野に興味をお持ちだそうですね。

小学生の頃から環境問題に関心を持ってきました。近年、地球温暖化の影響が異常気象や水害というかたちで顕在化してきています。これらを解決する手段はないかと考えるなかで、興味を持つようになったのです。
高校時代に、書籍や資料を通して知識を深めるうちに、環境問題の解決のカギはリサイクル技術にあるという結論に至りました。現代社会では不可欠の電子機器や家電には、金属素材の安定供給が不可欠です。ですから、金属リサイクルへの社会的需要が高まっていくはず。そこで大学ではこの分野を研究しようと考えたのです。
リサイクルの一番の魅力は、本来ならば捨てられてしまう物の中から有効な素材だけを取り出し、形を変えて日常に蘇らせることができる点です。自分たちが普段使用し、処分する物に対して適切な処理を施すことを繰り返せば、生活の快適さを維持しながら環境負荷も減らしていくことができます。
金属リサイクルのプロセスには解体、粉砕、選別、製錬という段階がありますが、このうち最後の製錬では1600℃以上の高温の製錬炉の中で、金属を熔かす工程があります。熔かす際に金属に余計な成分が付着していると、その成分が炉に残留してしまうことがあります。そうなると、炉を新しいものに取り替えなくてはなりません。炉を傷めず、より純度の高い金属を取り出すためには、その前段階の解体・粉砕・選別が重要になってきます。
大和田研究室では、製錬の手前の粉砕・選別プロセスを効率化することを主な課題としています。私は電子機器内の電子基板のリサイクル方法について研究する予定です。配属されたばかりなので、現在は文献調査や具体的な実験の検討をしています。

異分野に関心を持てば
価値観は広がっていく

Q 印象に残る授業を教えてください。

何と言っても、1年生で取った「理工文化論」ですね。これは広く理工学分野で活躍されている著名な方を招いてお話を伺う授業です。
毎回異なる外部講師の方に来ていただくのですが、なかでも興味深かったのはAI研究者の実務のお話でした。AIについてはニュースや新聞で目にするものの、その実態についてはよく知りませんでした。AI囲碁ソフト「アルファ碁」が世界チャンピオンを倒すニュースが話題になっていた頃で、AIが人間の力を上回る時代が到来したとする意見も耳にしました。しかし受講してみると、人間を上回る領域と、そうでない領域が存在することがわかりました。要するにAIは活用法が重要だということです。例えばリサイクルの分野でも廃棄物の仕分けや検知技術で応用が可能でしょう。日本は少子高齢化が進行し、労働力の確保は急務です。AIを積極的に導入し、代替できる部分はAIに任せていくべきだと思います。

Q これからの展望を教えてください。

修士課程に進み、その後は非鉄精錬系の企業への就職を目指しています。それまでに一度、海外を見ておきたいと思っています。それもアフリカ諸国に興味があります。
これまで欧米や日本などが経済的に主導していましたが、これからは新興国の躍進が予想されます。特にアフリカは資源に富む国が多いので、大きく経済成長すると思っています。アフリカの現状を見ることで工業発展の様子がわかりますし、工業発展の裏には環境問題がつきものですから、研究にも役立つはずです。さらに異分野・異文化を積極的に吸収して、後のキャリアにつなげたいです。