社会環境工学科や土木分野に少しでも興味があれば、
安心して進学して欲しい

建設工学専攻 修士2年
山﨑 諒介 Yamazaki Ryosuke
小野研究室
2021年度インタビュー

Q 研究の内容を教えてください。

道路橋の耐震設計に関する研究をしています。道路橋は一般的に鉄かコンクリートで作られ、私は鉄製の橋を対象としています。鉄の構造物には断面が四角形で中が空洞のパーツがよく用いられます。このようなパーツは4枚の平らなパネルを「溶接でくっつけて」作られるので、大きな力がかかると溶接した部分が割れてしまう危険性があります。
その対策として私の研究では曲げ加工を施した構造に着目しています。平らなパネル同士を角で溶接する代わりにL字型やコの字型に曲げたパーツを橋梁に用いることで、割れにくい構造になります。
地震によって万が一過大な力が作用しても、割れたり崩れたりする確率が格段に下がるため、地震の多い我が国では、非常にメリットが大きいと考えています。
修士論文では鉄に曲げ加工を施した場合にどのような材料的変化が起きるのかを調べたり、実際に小さい柱を作って、強度を調べたりしました。博士課程でも引き続き情報収集を行いつつ、設計法の開発に取り組みたいと思っています。

研究の概念図

Q この研究に取り組むようになったきっかけは

兵庫県南部地震で橋が崩落してしまい、車が取り残されている映像を見たことのある方も多いと思います。あのように橋が完全に壊れてしまうと、人命救助や災害復旧の妨げとなってしまいます. 損傷を完全に防ぐことが難しくとも、大地震の直後でも通行可能な橋を実現することは多大な社会貢献になると考えました。
実は曲げ加工を活用したパーツは建築の分野ではごく一般的に活用されており、全く新しい発想というわけではありません。
この研究テーマ自体も私が一から始めたものではなく、研究室で数年前から引き継がれてきたものです。長いスパンで物事を考えるのも、社会環境工学科で学ぶ土木分野の特徴かもしれません。

実験供試体と並んで

Q 博士課程へ進学とのことですが

大学に入った当初は高校の教員になりたいと考えていて、教職課程の単位も取得していたのですが、途中で断念してしまいました。しかし就職活動の時期に、自己分析をしていくうちに、教員になりたかったことを再認識しました。なかなか志望する企業を絞り切れていなかったところに、所属研究室の小野先生から「大学の先生も向いていると思う」と声をかけていただいたのです。
大学の先生になれたならば教育も研究もできることに気づかされました。覚悟のいる進路選択ではありましたが、思い切って飛び込んでみることにしました。不安も多いですが、少なくとも研究室内では人一倍熱心に取り組んできたと自負しているので、自分なりに頑張ってみようと思います。

趣味で撮影した東京ゲートブリッジ

土木分野は、それぞれが密接に関連している

Q 社会環境工学科のよいところは

学べる範囲が広いことだと思います。この学科は「都市計画」や「まちづくり」といった分野に憧れて入ってくる学生が多いのではないかと思います。しかし、社会環境工学科で幅広く学ぶうちにそれぞれが新しい興味を抱き、構造、計画、防災、環境など、さまざまな分野に分かれていきます。
専門こそ分かれていくものの、各分野は互いに強く関連し合っていると思います。私の専門は橋梁ですが、その基礎部分は必ず地盤の上に建設されますし、河川や海、他の道路や線路の上を通ります。交通や防災の計画とも密接に関わっており、切り離せないでしょう。
進路選択の時点では学びたいことや将来やりたいことが定まっていない方も少なくないと思いますが、どうか安心してください。どの道へ進もうと、そこで出会った友人と学ぶうちに、やりたいことは自ずと見つかると思います。「友人と」というのが大きなポイントです。私は社会環境工学科に入って素晴らしい友人に恵まれました。学ぶ内容も日常の生活と密接に関わるものが多いのできっと興味が持てると思います。