社会で役立つことを幅広く学べるから
実社会に興味がある人におすすめです

経営システム工学専攻 修士1年
上野 佑馬Ueno Yuma
永田靖研究室
2016年度インタビュー

Q どのような研究に取り組んでいるのでしょうか。

永田靖先生の統計科学研究室に所属して、統計学を研究しています。学部の頃は統計手法の一つである「回帰分析」を、機械学習の分野で活用されているランダムフォレストやXmeans法などを組み合わせることによって、精度の良いものにする研究をしていました。
修士課程に入ってからは、最近注目されている「ベイズ統計学」という新しい統計学に挑戦しています。

Q 具体的にはどのような内容ですか?

回帰分析の最も基本的なモデルは、2つの変数の関係をうまく1本の直線で示すものです。直線はy=ax+bで示されますから、2つの変数の関係を式で表すこととも言えます。
たとえば、グラフ上にいろいろな人の身長と体重とをプロットしていくと、だいたい身長が高ければ体重が増えるという関係が見えてくるはずです。回帰分析を使うと、グラフ上のポイントのなかに、上手に1本の線を引けると考えればわかりやすいかもしれません。
しかし、2つの変数の関係は必ずしも直線で示せるとは限りません。また、2つの変数で比例する関係でも、3つ以上の変数になれば、関係はより複雑になります。このように回帰分析だけでは説明できない要因を推定するために、ランダムフォレストやXmeans法などを活用しました。

Q 理論的な研究なのですね。

最終的に理論は現実に適応できなければ意味がありません。ですから、卒業論文の段階では、実際のデータに適用して考えています。
僕が活用したデータは、米国ボストンの住宅価格データで、住宅の価格と、面積、築年数、駅からの距離、犯罪率など、14の変数との関係を直線で示しました。

Q ベイズ統計学とはどのようなものなのでしょうか。

これまでの統計学は経験的なものでした。たとえばコインを10回投げて、表が9回、裏が1回出たら、表が出る確率は90%です。この確率を事後確率と呼びます。
しかし、この確率は直感的に正しくないですね。コインを投げる前に、表と裏が出る確率は50%ずつだと推測できます。この事前に予測できる確率(事前確率)を、事後確率に加味して確率を推測すれば、経験的な統計よりも正しい結果を出せそうです。非常に大まかな説明ですが、このような考え方がベイズ統計学です。
ゼミで『ベイズ統計学』という本を輪読したのですが、そのなかにも書かれている「モンティ・ホール問題」※が面白くて興味を持ち始めました。数学が好きな方ならきっと面白いと思います。
学んだ内容を活かして、統計学を分かりやすく伝える「統計ラボ」というサイトを運営しております。ベイズ統計学に関しても詳しくまとめているので覗いてみてください。

統計ラボ:https://toukei-lab.com

早稲田のウリは、
いろいろな文化背景を持つ人と交流できること

Q 上野さんが経営システム工学科を選択した理由は?

高校時代は物理が好きで、大学では宇宙物理学を学んでみたいという気持ちから物理学科を志望していました。ところが、父から「高校の物理と大学の物理とは違うぞ」と言われたことをきっかけに、他の学科を検討。父の出身学科でもあった経営システム工学科(当時は工業経営学科)を受験しました。
実際に入学して感じたのは、社会に役立つことばかりを幅広く学べるということです。経済学、統計学、生産管理、マーケティングなど、3年生になるまでに具体的かつ幅広く社会のことが見えるようになりました。永田研究室を選んだのも、ビッグデータなどで注目を集める統計学は、将来きっと役立つだろうという確信があったからです。
今は新規事業やサービスの立ち上げなどにも興味があり、今の研究と関係する仕事に就くかはわかりませんが、経営システム工学科に入って本当に良かったです。

Q 受験生へのアドバイスをお願いします。

高校時代に興味を持った教科から、学科を選ぶのが一般的なのかもしれません。たとえば、物理が好きだから物理学科というように。でも、あえて「一度立ち止まって、考えてみたほうが良い」と伝えたいです。大学時代の勉強だけではなく、卒業し、社会人になってからのことも考えてみて欲しい。そして、少しでも迷いが生じたり、その教科以外の勉強もしてみたいと思ったりしたら、考え直すべきです。
父が言っていたのは事実で、大学に入ると「物理は数学に、化学は物理に、数学は哲学に」変わるといわれるように、同じ物理でも高校と大学とでは大きく異なります。きっと僕が物理学科に入っていたら、興味が続かず、熱意も冷めてしまったはずです。しかも、物理だけを深掘りしただろうから、他の分野に転身しようにもできなくなっていたかもしれません。
一方、経営システム工学科では幅広く知識を養えますから、いろいろな分野に進める可能性があります。実際、就職先も幅広いです。大学を選び直せるとしても、僕はもう一度経営システム工学科を選択します。そのくらい良い学科ですから、少しでも多様なことを学びたいと思ったら、経営システム工学科を選ぶことをおすすめします。

Q 最後に早稲田大学のアピールをお願いします。

いろいろな文化背景を持つ人と交流できることです。早稲田は日本人の学生数も多く、変わった学生も多いですが、留学生の数は日本最多。しかも、留学生と交流する仕組みもあります。
たとえば、本部キャンパスにある国際コミュニティセンター(ICC)ではいろいろなイベントも開催していますし、ラウンジでは普段から留学生と交流することが可能です。また、国際部の授業でTA(ティーチングアシスタント)をすることもできます。ですから、国籍を問わず、いろいろな人と交流したい方は、どんどん早稲田に入ってきてほしいですね。

※モンティ・ホール問題
かつてアメリカの人気テレビ番組で行われたあるゲームが議論を呼びました。3つの扉があり、そのうちどれか1つの扉の向こう側には、景品が用意してあります。この扉が当たり、他の2つはハズレです。挑戦者はまず、3つの中から一つを選択します。しかし、まだ開けてはいけません。答えを知っている番組司会者(モンティ・ホール氏)は、挑戦者が選ばなかった2つの扉のうち、ハズレの扉を一つを開いた上で、挑戦者に問います。
「開かれていない扉は2つですが、ここで再度、選択のチャンスがあります。最初に選んだ扉を開けますか? それとも、扉を変えますか?」
この時、当たりを選ぶ確率が高いのはどちらか。最初の選択のままか、扉を変えた方が良いのか。
答えは「扉を変えた方が当たりを選ぶ確率が上がる」です。扉を変えれば正解の確率が2/3になるが、変えなければ1/3になります。詳細はぜひ西早稲田キャンパスで学んでください。