共同研究で培った経験を
就職後に活かしたい

経営デザイン専攻 修士1年
髙山 莉紗子 Takayama Risako
棟近研究室
2020年度インタビュー
※新型コロナウイルス感染対策のため、リモートで取材を実施しました

Q 学部生の頃、共同研究の成果が企業に採用されたそうですね。

食品会社との共同研究で、ヨーグルトの容器の使いやすさを研究していました。ヨーグルト製品といえば、400ml程度の大きなものと150ml程度で三つセットのものを思い浮かべた方が多いのではないでしょうか?私は400mlの大きいものを研究対象に選びました。これにはプラスチック製のカバーがまずあって、それを開けるとぺらぺらした「内ぶた」が出てきます。この2種類に着目して使いやすい容器に改善するのが研究テーマでした。
研究では2つの方法でアプローチしました。
第1にアンケートです。一般消費者にいくつかのヨーグルトのふたを開けてもらい、その開けやすさについて聞き取りをしました。このとき気をつけたのは文面。専門用語を使うと回答者が混乱して正確な回答が得られないからです。
第2に、容器がどのような物理特性を持っているかを調べました。アンケート調査で評価が高かった製品が持っている物理特性を品質改善に生かすのです。調査の結果、重要なのは「内ぶた」を剥がす際の粘着度だとわかりました。またプラスチック製カバーの改善については、共同研究先の企業から高い評価をいただきました。

「ACP」を実施するためのフローを構築する

Q 現在の研究内容を教えてください。

ある医師会と共同で地域包括ケアシステムの構築について研究しています。
地域包括ケアシステムとは高齢者が最期まで自分らしい暮らしをできるように、自治体や病院、介護施設が地域単位で支援を行う終末医療体制のことです。
各医療機関は連携が不十分でした。たとえば高齢者が入院後、病状が安定して退院すると、介護施設や医療事業者にバトンタッチすることになります。しかし病気や患者の特徴などの情報が共有されていないと、退院後のケアに支障が出てしまいます。
その逆のパターンもあります。高齢者の意識がなくなって病院に運ばれた際に、終末医療の方針が問題となります。高齢者が延命を望むのか、もしくは自宅で最期を迎えたいのか、病院で迎えたいのか、意向がわからないことが多いのです。
このような事態を未然に防ぐためには、各医療機関が連携して、先んじて高齢者に意思確認をすることが重要です。日々の介護に望むことから、息をひきとる場所まで、細かく決めておく必要があります。
このような意思確認をACP (Advance Care Planning)といいます。私が現在取り組んでいるのは、この実施フローの構築です。
ACPは高齢者が自らの死について考え、意思決定する必要があるので「縁起が悪い」「不吉だ」などと反発を招くことがあります。実は認知度も低く、医療現場では浸透していません。ACPの存在を知らない医療従事者がいるほどです。
ACPは実施するタイミングが重要です。例えば入院時に話し合うにしても、入院したばかりで信頼関係ができていないのに、いきなり治療の方針や、亡くなる場合の話まで聞くのは難しい。それを乗り越える実施フローを構築するのが、これからの課題ですね。

経営システム工学科は
あらゆる側面から経営に迫れる

Q 学部生の頃と研究テーマを変更した理由は?

自分の研究成果が企業に評価されたことで、感性品質の分野は「やりきった」感覚がありました。そんなとき医療分野の研究をする先輩の発表を聞く機会がありました。ヨーグルトの研究の際には、どのようなデータが必要かを考えるのも自分、実際にデータをとるのも、アンケート内容を考えるのも自分自身でやりました。それとは対照的に先輩の発表は官公庁のデータや文献を調査し、結論を導き出すというもの。感性品質と全くちがうアプローチだったので、新鮮に感じて、強く興味をひかれたのです。
地域包括ケアシステムの研究ではこれからアンケート調査も予定していますから、ヨーグルトの研究で培った経験が生きてくると思います。

Q これからの展望を。

将来は今まで学んできた経営工学を活かせるような仕事に就きたいと考えています。今のところ、コンサルタントを候補の一つとしています。共同研究での経験が、企業や法人の抱える課題を解決するコンサルの仕事にも役立つと思うのです。
経営工学はその名の通り、経営をしていく上で必要な知識を、金融、統計、マーケティング、プログラミングなど、あらゆる側面から学べます。就職先も幅広く、多くのOB・OGが各業界で活躍されています。私もそれに続きたいですね。