熱意こそが研究の原動力
だから、好きなことをやろう!

建設工学専攻 修士2年
櫻井 絢子Sakurai Ayako
秋山充良研究室(コンクリート工学・耐震工学)
2016年度インタビュー

Q 研究の内容から教えてください。

現在、社会問題となっているインフラの劣化について研究しています。そのなかでも、私が研究しているのは、構造物の寿命や体力を予測するため、コンクリート内部にある鉄筋の腐食がどのように進むのかを調べ、予想することです。
コンクリート構造物は水や海水に含まれる塩(塩化物イオン)などが染み込む塩害により、内部にある鉄筋が腐食して劣化していきます。しかし、腐食の仕方は環境によって異なります。また、均一に腐食するのではなく、空間的なばらつきがあるのです。

Q 具体的にはどのようなことに取り組んでいますか。

まず、実験です。小さな鉄筋コンクリートを作り、電気を流して人工的に腐食させます。X線写真を撮って、コンクリート内部の詳細を把握し、どのように腐食が分布しているのかを調べます。
次に、シミュレーションです。実験データにもとづいて、実際にある橋梁の解析モデルを作り、コンピュータでシミュレーションを積み重ねます。そしてシミュレーション結果の統計を取り、劣化の段階や寿命を確率論で予想するのです。
ですから、実際にコンクリートを練ったり、パソコンを使ったりと、いろいろなことをやっています。

Q 研究の難しさと喜びは?

これまでの研究では、実験とシミュレーションとが別々に研究されてきたため、実験データと解析に用いるモデルとがリンクしていませんでした。ですから、解析モデルに組み込めるような実験をし、データに基づいた解析を行うことで、より実際の挙動に近い結果が出れば嬉しいです。
大変なのは実験です。腐食を進行させるので、半年くらい継続して行う実験もあるのですが、いかにミスなく進めるかに気を使っています。特に私の実験班は半数以上が留学生で、つねに2〜3ヶ国語が飛び交う状態ですから、意思疎通に配慮しなければなりません。

Q どこの国の留学生ですか?

中国からの留学生が4人、カンボジアからの留学生が1人です。言葉は英語中心ですが、そんなに難しいことは話しません。研究で使う単語と、簡単な日常会話で十分です。
秋山研究室のみならず、留学生の多さは、早稲田の魅力の一つだと思います。彼らとの交流は楽しいですし、良い刺激になりますね。

社会環境工学科と建築との違いは
公共の構造物を扱うかどうか

Q 印象に残っている授業を教えてください。

研究室に入るきっかけとなった秋山先生のコンクリート実験や講義は楽しかったですね。実験では条件をミリ単位で設定しなければならないほど繊細なのに、巨大な構造物を建設できることを知って衝撃を受けました。また講義では、いろいろな構造物に活用されているのに、まだ不確定性が残っていて、「わからないことがある」ということにインスピレーションを受けました。
他に、空間デザイン演習という授業も印象に残っています。これは実際の街をより良くするためにどうしたらいいかを考える授業です。街にある問題を自分で設定し、それを改善するために、モデルを作ってプレゼンを行います。私は自分の住んでいる街の駅前を想定し、バスが狭い道路を通って危険だという問題を解決する方法を考えました。少し建築学科に近い内容ですが、公共構造物の建設を実際の街をベースにして考えられるようになります。

Q 社会環境工学科と建築との違いは?

社会環境工学科はもともと土木学科で、建築学科とは密接な関係がありますが、両者の違いを簡単に言えば、公共で使うインフラを取り扱うのが土木で、それ以外は建築です。道路や橋梁はもちろん、ガス、水道なども土木で扱う対象に含まれます。
公共施設ですから、社会環境工学科では、最大多数の人がより効率的に使えるものを安全に建設することを目指します。

Q 櫻井さんが社会環境工学科を選んだのは?

ただモノを作ることが好きだったことと、街の防災や景観に興味があったことから、社会環境工学科を選択しました。今思えば受験生の頃は、将来やりたい仕事などはまったくなく、ただ「構造物の研究って楽しそうだな」と考えていただけです。
やりたいことが逆算して、学科を選ぶべきだという意見もありますが、まだ知識も見聞も少ない高校生の段階で、将来を決めるのは難しいかもしれません。ですから、就職や将来の進路を考えるよりも、まずは自分の好きなこと、興味のあることを学んでいくべきだと思います。結局、熱意が原動力になるからです。
熱意をもって学んでいけば、たくさんのことを吸収できるので、選択肢は広がります。そうすれば将来やりたいことはきっと見つかるはずです。私のまわりを見ても、将来やりたいことが明確にあって入学した人は少なかったように思います。しかし、少しでも好きなこと、興味のあることを学んでいくうちに、自分の研究について熱心に語るようになります。次第に将来のビジョンも明確なものになっていくはずでず。
早稲田はいろいろな人がいろいろなことに挑戦しているところですので、自分のやりたいことが見つかると思います。ぜひ早稲田で自分の興味・関心のあることを学び、才能を開花してください。