環境分野には、まだまだ
開拓できるフィールドが広がっている

環境資源工学科 学部4年
阿部 優香里 Abe Yukari
大和田研究室
2020年度インタビュー
※新型コロナウイルス感染対策のため、リモートで取材を実施しました

Q 研究テーマを教えてください。

太陽光パネルのリサイクルについて研究しています。
実は太陽光パネルのリサイクル技術は、まだ確立されていません。ですから廃棄されたパネルは処分場に埋められているのが現状です。
リサイクルは、通常、製品から再利用する物質とそうでもないものに「分離」し、さらにそれらを「選別」する工程を踏みます。
太陽光パネルのリサイクルにおいて、問題となるのが「EVA(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)」と呼ばれる特殊な樹脂の扱いです。太陽光パネルはセルというガラス板の集まりで、セルには半導体や配線などが張り巡らされています。これらの部品の接着にEVAが使われているのですが、粘着性がとても高いので、一度接着すると剥がすのが難しいのです。
私は熱処理を加えることで、EVAを溶かして分離できないかと考えています。ある環境系企業との共同研究で、工場での熱処理実験が予定されているのですが、EVAを溶かすほどの高温、かつガラスが歪まない範囲の温度で加熱することにより、部品をバラバラに分離することができないかと考えているのです。

研究のモチベーションは好奇心
未開拓だからこそ挑みたい

Q 分離のあとの選別に問題はないのですか?

はい。選別には二つの方法が考えられます。
1つは渦電流選別。その名の通り電流を渦状に発生させて磁場を作るのです。ベルトコンベアの下にN極とS極が交互に配置されたタイヤのような装置を設置します。その装置を高速で回転させると磁場が発生し、上を通る廃棄物が電気を通すものである場合は磁場に弾かれて遠くに飛んでいきます。逆にガラスのように電気を通さないものは、ベルトコンベアをそのまま通過します。
もう1つの方法はエアテーブル選別。穴がいくつも空いたテーブル型の装置の上に、廃棄物を流します。このテーブルは少し傾いているので、そのまま廃棄物を流すと滑り落ちてしまいます。しかし下から上に空気を流して振動させると、重い物質は上に、軽い物質は下に選り分けられるのです。実はこの選別方法は原理の解明が難しいと言われています。その理由は装置の中で起きている物理現象が複雑であるためです。空気抵抗、重力、摩擦力などの複数の力が同時にかかっていて、どの力が選別の要因であるのかを特定することが困難です。
渦電流選別もエアテーブル選別も、鉱山で採れた金属の選別に使われていた技術で、近年ではリサイクル分野にも応用されているのですが、その機構解明の部分ではまだ課題が残っていると感じています。
私は未解決の課題があると「解き明かしたい」と好奇心が刺激されます。わからないことが多いからこそ、新しいことにたくさんチャレンジできる。そこに魅力を感じています。

人間の努力次第で
ゴミは資源に生まれ変わる

Q リサイクルの分野を選んだ理由は。

大和田先生の「資源リサイクリング」という授業を受講した際に、リサイクルの面白さに気づかされました。学生がリサイクルについて発表する形式の授業で、私は家電リサイクルについて調べました。そこで知ったのは廃棄物を分解する技術の重要性です。
私が所属する大和田研では「混ぜればゴミ、分ければ資源」というスローガンを掲げていますが、リサイクルはこれに尽きると思います。製品は実に多くの素材が組み合わさっていますが、捨ててしまえばまるごとゴミになります。でも製品を分解して再利用すれば、それらは資源として別の用途で生まれ変わることができる。人間の努力にかかっているのです。

Q 環境資源工学科のアピールポイントは。

環境工学科でもないし、資源工学科でもないところです。たとえば太陽光パネルのリサイクルは環境の分野。でもそこからガラスや金属を取り出すのは鉱山資源開発の技術です。環境資源工学科には石油系、大気汚染・水処理系、素材系、廃棄物系、多くの研究室がありますが、それらはバラバラではなくて、根本的な部分でつながっています。
環境と資源の両方を学べることは、学問の選択肢の幅広さでもあります。3年生の研究室配属までいろんな授業を受けて、各分野をじっくり学んでから研究室に配属されるので、その頃には環境も資源も、一通りわかるようになっています。自分が打ち込める研究が、きっと見つかるはずです。