「できる」よりも「やりたい」を優先し
好きなことにどっぷり浸かる学生生活を

地球・環境資源理工学専攻 修士1年
所 拓磨Tokoro Takuma
所千晴研究室(環境資源処理工学)
2016年度インタビュー

Q 研究内容から教えてください。

粉体シミュレーションに取り組んでいます。粉体とは、固体・液体・気体に続く物質の第4の形態とされ、日常生活にかかわるところでは、小麦粉などの食品、薬、化粧品などがその例です。
粉体は、細い管に詰まったり、互いにくっついたりする一方で、容器によって形を変えたり、流れるように動いたりもします。つまり、固体的な挙動もするし、液体のような流体的な挙動もするわけです。このように挙動が複雑なため、実験だけでその挙動を把握したり、メカニズムを解明したりすることは困難でした。そこで、その動きを離散要素法(DEM=Discrete Element Method)というシミュレーション手法を使って解析しています。
離散要素法を簡単に説明すると、粉体一つひとつの挙動を解析して、それらの重ね合わせによって全体の動きをシミュレーションする計算手法です。離散要素法によるシミュレーションは、もともとは土木分野で活用されていましたが、1990年代に粉体プロセスにも応用されて現在に至っています。近年、コンピュータの性能が飛躍的に向上しているので、粉体のシミュレーションの可能性がさらに広がっています。粉体の挙動はまだわからないところもたくさんあるので、やりがいがありますね。

Q どのような粉体を対象にしてどのような研究をしているのでしょうか?

所研究室では企業との共同研究も多いので、多くの業種にまたがる多種多様な粉体を扱います。鉱石や金属粉なども扱っていますし、廃棄された電子機器の内部にある電子基板を粒子の集合体で表現し、レアメタルなど価値ある物質を分離させるための解析も行っています。
僕が取り組んでいるのは、粉砕機の機能を向上させるためのシミュレーションです。粉砕機の形状や条件を変えたときに粉体の動きがどう変化するのか、その結果、粉砕性能がどう変化するのかをシミュレーションしています。もちろん、シミュレーションが正しいかどうかを確認するために、実際の実験データとシミュレーションと比較して検討することもあります。

Q シミュレーションの利点とは。

条件を簡単に変えられるのはシミュレーションの利点です。条件を変更して、繰り返し試すのは、実験だとかなり手間とお金がかかりますから。
また実験では一つの粒子の動きを追うのは難しいですが、シミュレーションだと粒子一つひとつの運動データをすべて数値として取ることができます。ですから、粒子の位置を調べたり、一つひとつの動きを把握したりできるのです。粉砕機のシミュレーションであれば、撹拌翼の近くにある粒子だけの数をカウントしたり、速度を計算したりすることもできます。こうした情報を装置の設計などに活用しています。
ただ、まだコンピュータの性能が追いついていません。現在のコンピュータが計算できるレベルに合わせるため、現実よりも大きな粒子を利用し、仮想的な物性値を使用するなど、粒子の挙動に影響がない要素を減らしたり緩和したりする判断も求められます。

早稲田の良さはOBOGとの団結力
後輩が困っていたら、先輩たちが助けてくれる

Q 早稲田大学の良さはどこにあると思いますか。

いろいろとあると思いますが、一つ挙げるとするならば、現役学生とOBOGとの団結力です。OBOGの皆さんが集まる稲門祭を見ていると感じますが、皆さん、愛校心が強いですよね。そして、後輩である現役学生たちが困っていたら、皆助けてくれます。今までの経験があるから、アドバイスも的確です。愚痴や文句を黙って聞いてくれることもあります。僕自身もサークルにいた頃に先輩方に助けてもらいました。

Q サークルはどのようなところに?

環境問題に取り組む「環境ロドリゲス」というボランティアサークルと、ゲームを制作するサークルに所属していました。いずれも学部3年いっぱいで引退しましたが、ゲームサークルの方は、今もOBたちで集まってゲームを作っています。現役の頃に作っていたのはアクションゲームでしたが、今はリズムゲームを開発したりもしています。月に一度くらい集まっていますが、普段はオンラインでやりとりしているので、それほど忙しくはありません。研究の合間にやっています。

Q これから早稲田を目指す方にメッセージをお願いします。

学科選びで、4〜6年間(人によっては9年間)もの長い間、やることが決まるわけですから、悩む人もいるかもしれません。なかでも、自分の「能力」や「できること」を基準に選ぶべきか、「興味」や「好きなこと」「やりたいこと」を基準にすべきかは悩ましいところです。
大学は専門教育ですから、高校までとは異なり、すべての科目を勉強するわけではありません。必修科目をおさえれば、他の科目は自由に選べるのです。このことを踏まえると、自分の好きな科目を学んだ方が楽しいのではないでしょうか。好きな科目を積み重ねた先に、やりたい研究があれば、ずっと好きなことに取り組めます。
一方、自分の能力は、どのような分野に進んでも活かすことが可能です。僕も高校の頃からコンピュータのプログラミングを学んでいましたが、その能力は今のシミュレーションの研究に活かされています。好きな分野に進み、自分の能力を活かせばいいのです。ですから、とにかく自分のやりたいことを中心に決めるべきだということをお伝えしたいですね。