誇りをもって仕事をしたいなら、
土木がお勧め

東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)
鉄道事業本部 設備部 企画戦略グループ
狩野 淳一 Kano Junichi
2016年度 建設工学専攻修了
秋山研究室
2021年度インタビュー

Q お仕事の内容を教えてください。

現在は、主に採用業務に携わっています。所属部署は設備部なので、技術の立場から採用活動をしています。採用全体の統括は人財戦略部という人事担当部署が担いますが、私は土木系技術職として応募していただく、新卒または中途の方への広報から選考活動までを担当しています。相互理解のためには、直接顔を合わせて話すことが重要だと考えます。一方、コロナ禍の状況もあるため、対面が難しい場合であっても「人」と接する機会を必ず設けるように心がけています。
現在、JR東日本は「変革2027」という経営ビジョンを掲げています。これは人口減や鉄道の移動ニーズの減少等の経営環境の変化に対応するためのもので、設備部ではメンテナンスの効率化、設備のスリム化などに取り組んでいます。また、2031年度からは東北新幹線や上越新幹線の安定輸送確保のため、橋りょうやトンネルなどの新幹線構造物の大規模改修を控えており、当社は大きな転換期を迎えています。未知の領域に挑戦していくフェーズに入ってきていますので、挑戦心があって、誰もやったことのない業務にやりがいを感じられる方々と一緒に仕事ができればと考えています。
現在の部署に配属になったのは昨年(2020年)の9月からですが、その前は秋田支社で保線業務に携わっていました。保線というのは、新幹線や在来線のレールやその下のマクラギや道床を整備する仕事です。決して目立つ仕事とは言い難いですが、お客さまの安全の根幹に関わる業務で、やりがいを感じて日々業務に取り組んでいました。そのなかでも当時の私の役割は、その保線業務に関わるルールの履行確認と、仕事をより円滑にするための既存ルールの見直しでした。そのルールの見直しの一貫として、営業列車の走行中に線路状態を把握する、線路設備モニタリング装置の導入がありました。この装置では、線路の歪みを検測したり、材料状態を撮影することができます。現在も保線の作業自体は作業員の経験で調整する部分もありますが、線路状態の把握を目的に、最新技術も使われてきています。
この装置の導入により、例えば奥羽本線という在来線では、目視での線路点検を高頻度で行ってきたのですが、モニタリング装置から日々得られるデータを活用することで、目視での線路点検の周期を延伸しています。これからも効率的なメンテナンスの実現に向けて、積極的に新しい技術を取り入れていきたいと考えています。

秋田での保線業務中の一コマ

学んだのは既存のルールにとらわれないこと

Q 学生時代で印象に残っていることは

秋山研究室では、既存の鉄筋コンクリート構造物の維持管理の効率化を目的として、劣化予測式の実現に向けて解析を行っていました。劣化は塩害による鉄筋腐食を対象としており、この式を用いて従来の劣化予測に必要だった、煩雑な解析の省略を目指していました。実現に至れば、橋りょう等の構造物の一部だけを採取することで、全体の劣化予測ができるような仕組みづくりに貢献できるものです。この研究の発端は、劣化予測を簡易に行うことができれば、従来の設計で付与してきた安全率の見直しが可能となり、コストの削減が実現できると考えたことでした。
現在の仕事でもメンテナンスの効率化に取り組んでいるので、考えていることは同じ部分もあります。ただ、直接的なメンテナンス手法というよりも、今あるルールを疑ったり、緩和できる部分がないかという前提から仕事を考える姿勢のようなものが秋山研で身についたのが現在の仕事に活きていると感じます。
また、私は秋山研究室の3期生で、当時は新しい研究室でしたから、何をやるにも手探り状態でした。研究室としての方針や考え方、哲学のようなものを学生たちに根付かせる必要がありましたから、研究室内外に理解を促す催しーー研究テーマ説明会、宴会やゼミ合宿なども含めたーーを企画・運営していたことが今となってはとても役立っていると感じます。仕事は人が集まってやることですから、どう盛り立てるかということを考えながら学生生活を送ることができたのは幸運でした。

建設現場での研究室の仲間と

Q 社会環境工学科で学んだことは

「インフラを担う精神」です。インフラというのはその上を人が歩き、生活するところですから、大きな責任があります。簡単な仕事ではありませんが、自分の仕事へのやりがいやもっと言えば「誇り」のようなものが、必ず持てる仕事です。このようなことに興味があれば、心からお勧めします。また、やりたいことが見つからないという人も、将来は自分の仕事に誇りを持ちたいと少しでも感じれば、幅広い観点から土木について学ぶことのできる社会環境工学科に進むのは良い選択肢だと信じています。