目に見えない現象を可視化する
数値シミュレーションの世界

総合機械工学専攻 博士後期課程1年
金井 太郎Kanai Taro
滝沢研二研究室(流体構造連成系応用力学)
2016年度インタビュー

Q 早稲田に、また総合機械工学科に入ろうと思ったきっかけは?

小学生の頃からラグビーをやっていたので、昔から早稲田ラグビーへの憧れはありました。早稲田のなかでも特に総合機械工学科に入りたいと思ったきっかけは、「理工展」でした。小学校6年生の時、親戚に連れて行ってもらい、機械に夢中になったのです。当時の理工展では、世界で初めてヒューマノイドロボットを製作した加藤一郎先生のロボットが展示されていて、強烈な印象を受けました。また、ブースで開催されていたスピーカー作成に無我夢中で取り組んだことを覚えています。はんだごてを使って、一からスピーカーを組み立てて完成した時には、達成感で胸がいっぱいになり、「早稲田の機械科に入ったら、こんな凄いことができるのか!」と感動しました。よほど嬉しかったのか、「将来は絶対、早稲田に入る!」と家族に宣言したらしいです(笑)。

Q 現在所属している研究室は?

滝沢研二先生の研究室に所属しています。数値シミュレーションの技術を用いて、パラシュートやタイヤ、流体機械、血流などの研究を行っています。特に、滝沢先生はライス大学にいたときから長年に渡りパラシュートの数値シミュレーションに取り組んでいます。パラシュートは空気の流れによって変形し、空気の流れはパラシュートによって影響を受けます。このように、空気のような流体と、パラシュートのような構造物が、相互作用する現象を「流体構造連成」と呼びます。流体構造連成を考慮した解析は難しく、研究室にはそのノウハウがあります。
滝沢先生は世界が注目する気鋭の研究者で、昨年もトムソン・ロイターが主催する「第4回リサーチフロントアワード」を工学分野で受賞されています。

Q 金井さんご自身の研究内容を教えてください。

NASAと共同で、宇宙船が地球に戻ってくる際に用いられるパラシュートの解析を行っています。これまでは比較的低速で使用されるパラシュートを研究されていましたが、私が対象としているパラシュートはより高速で使用されるものです。高速の流れになると「圧縮性流れ」という特異な挙動を示すため、より複雑な研究になります。
実はパラシュートには機体を安定にするための穴が開いています。この穴から空気が抜け出ることで、安定に航行できるようになります。穴の大きさや位置を適切に設計することで、より安定性が高く、軽量なパラシュートの設計を目指しています。

Q 研究で大変な点と、やりがいを感じる点を教えてください。

あくまで数値シミュレーションであり、実験のように実際の物理現象を観測するわけではありません。出てきた結果が、信頼に足るものだと妥当性を示すことが大切になります。妥当性のある結果が出たときは嬉しいですね。
数値シミュレーションの優れている点は、実験では見られないような現象を可視化することができる点です。パラシュートの形状や大きさ、流れの速さなどを自由に変えて試せます。滝沢研究室では可視化にも力を入れていて、シミュレーションの結果を美しいグラフィックで表現することができます。これは「目に見えないものを見られる技術」と言っても過言ではないと思います。

早稲田のウリは何でも対応できる多様性
だから、自分のやりたいことに挑戦してほしい

Q これらの研究は、高校でいうとどの科目になりますか?

物理と数学にあたりますが、実際には大学に入ってから学ぶことがほとんどです。研究の中心となるのは、分野名で言うと「流体力学」や「計算力学」に相当します。前者は空気や水などの流体の物理現象を数式で考える学問で、後者はその数式をコンピュータで扱うための学問です。いずれもかなり難しい分野です。
しかし、たとえ高校の頃、物理や数学が得意だったとしても、大学でサボるとついていけなくなります。逆に、物理や数学が苦手だったとしても、やる気と興味さえあれば、大学に入ってからでも研究で結果を出すことができます。

Q 最後に早稲田大学のアピールをお願いします。

早稲田のウリは、何と言っても多様性です。一学年、1万人もの学生がおり、卒業生も約60万人もいます。また、大学内にも本当にいろいろな人がいて、何かしたいと思い立ったら、大学内に誰かしら専門家がいるほどです。理工系の学部・学科が最先端なのは当然ですが、たとえば、海外に興味があれば、すべて英語で授業を行っている国際教養学部の学生に話を聞けばいいですし、スポーツに興味があれば、スポーツ科学部の人にアプローチすればいいです。部活やサークルなどの課外活動も含めて、どんなことにも対応できる多様性があります。何か目的や目標があって入学する人にとっては、何かしらのサポートが提供される環境です。
もちろん、高校生の段階では、やりたいことがわからない人もいるでしょう。また、たとえ目標があったとしても、まだまだ視野が狭いかもしれません。早稲田に入り、多くの人たちと接すると、いろいろなことを学べて視野が広がります。そのなかから、きっと自分のやりたいことが見つかるはずです。ぜひ早稲田に入って、自分のやりがいを見つけてください。


※学年は取材当時のものです