建築を通して世界を学ぶ場所
だから、学びは無限大

建築学科 学部2年
河野 茉莉子Kawano Mariko
2016年度インタビュー

Q 受験の思い出から聞かせてください。

最初の数学がひどい出来で、絶対に落ちたと思いました。「これはもう受からない、帰ろう」と思い、父に連絡すると、「とにかく最後まで受けてきなさい」と返信が来ました。それで、残りの科目と翌日の「空間表現」*1を受験しました。
数学がそんな散々な結果だったのに合格できたのは、「得意科目選考」*2のおかげです。総合点が合格点に達していなくても、特定の科目で高得点を取れば合格できる制度で、私は英語か空間表現のどちらかが良かったのだと思います。
ですから、これから受験を控える皆さんには「当日、どんな結果になっても、最後まで決して諦めないで」と伝えたいです。

*1空間表現:建築学科のみの受験科目で、課題は鉛筆デッサンなど。通常、他科目の翌日に行われ、試験時間は120分間、配点は40点。(日程等は入試要項等でご確認ください)。

*2得意科目選考:学系、学科が指定する科目で特に優れた能力を示したと判定された受験生を総合点が合格点に達していなくても合格とする選考方法。建築学科の指定する科目は、英語、数学、空間表現。

自分のやりたいことを表現した上で
いかに伝えかを戦略的に考える

Q ほかの大学等の建築学科と、早稲田の建築との違いは?

芸大などにも建築学科がありますが、ほとんどデザインが中心だと思います。でも、早稲田の場合、あくまで、創造理工学部のなかの建築学科なので、数学、物理、化学を基礎からしっかり学ぶところが違う点なのではないでしょうか。実験もありますし。
ただ、数学が苦手な私でも授業にはついていけますから、心配ご無用です。大学の試験では授業の内容を理解していれば良く、大学受験のように多くの問題を急いで解答するというような形式ではないからです。

Q 授業で印象に残っていることは?

1~2年次に「建築表現」という授業が週のはじめにあり、3限から5限までという長丁場なのですが、とにかく課題をこなすのが大変でした。製図の課題なのですが、当然、一定の基準を満たしていなければ受理してもらえません。土日を潰してもまだ終わらず、徹夜することもありました。
ほかに「設計演習A」も印象に残っていますね。美術のような授業に、新たな視点や思考をプラスした授業で、とても楽しかったです。
課題には講評会があり、作品を先生方に講評してもらえるのも特徴です。先生方の講評を通して、自分の作品の長所と短所を知ることができます。そうした制作活動と講評の繰り返しの中で、作品製作に自分の持ち味を生かすことができるようになります。

Q 短所を補うより、長所を出そうと意識するのはなぜですか?

建築では、作りたいものを作るだけではなく、自分が作りたいことをどう表現し、どう伝えるかも大切です。目的や意図、狙いが伝わらなければ、作りたいものを実現することができません。それを図面に表そうとする人もいれば、絵で表現する人もいますし、建築模型や言葉で伝えようとする人もいます。また、インパクトのある表現を選ぶこともあれば、ターゲットに合った表現を採用することもあるでしょう。
何かを人に伝える場合、その表現方法は一つではありません。どうすれば自分の案が人々の目に魅力的に映るだろうかと考えたとき、自分の持ち味や長所を生かすのが最善だと思いました。個人的には、キャッチーなフレーズを考えるのが強みだと思っているので、これからもっと磨いていきたいです。

大学は目的ではなく、あくまでも手段
やりたいことは何なのかという目的意識を

Q 学外でも建築を学んでいるとか。

週に1日、5時間程度ですが、建築模型を製作するアルバイトをしています。ほかに、試験後など、落ち着いた時期の休日に、SANAAという建築事務所のオープンデスクに行っています。どちらも私にとって貴重な体験になっていると思います。SANAAの事務所内は国際的で、前回は、韓国人、中国人、スペイン人に囲まれて作業しました。英語で指示される作業は新鮮でした。

Q サークル等はやっていますか?

アカペラサークルに入って、週1~2回、文学部キャンパスの学生会館に通っています。高校の頃、英語でミュージカルを演じる部活に入っていたこともあり、歌うのが好きなのです。インカレサークルなので、他学部の学生のみならず、他大の学生とも仲良くなれます。
早稲田はサークルが盛んなので、課題に忙しい建築学科でも、皆だいたいどこかに所属していると思います。

Q 最後に、受験生にメッセージを。

大学は、あくまで自分の目的を達成するための手段。まずは自分が何をしたいのか目的を考え、意志を持って受けることが大切だと思います。もちろん、熟考の末、答えが出ないこともあるかもしれません。それでも、自分が何をしたいのかについて考えるそのこと自体にに意味があると思います。
とはいえ、「なんか建築面白そう」というような、漠然としたイメージで入学しても、問題はありません。たとえ、入学してから「自分には建築が合わない」と感じたとしても、早稲田の建築学科にはその人の力を発揮できる場が必ず存在します。繰り返しになりますが、私たちは建築の手法だけを学んでいるのではなく、自分の考えていることをいかに伝えるかまでを学んでいます。それはあらゆる分野に適応できるはずです。私たちは、建築という言語で世界を読み直しているにすぎません。
実際、建築学科を卒業した後建築業界に進む人もいれば、その他の分野――広告や美術などに進む人もいます。迷っている方も、思い切って早稲田の建築の門を叩いてみてほしいと思います。