排出ガス問題に触媒で貢献するーー
今後はドイツ企業とも協力

総合機械工学科 学部4年
高野 愛子Takano Aiko
草鹿仁研究室
2024年度インタビュー

Q. 卒業論文のテーマはどのような内容ですか。

自動車に使われる触媒(自動車用)活性貴金属表面の酸化被膜の形成過程について研究しました。自動車触媒とは、自動車の排出ガスに含まれる有害排出物質を浄化する装置です。私は自動車触媒の中でも、主に火花点火エンジンに使われる「三元触媒」を研究しています。実験では、三元触媒にガス(COとO2及びN2)を流し、それぞれの成分濃度を変えながら、排出ガスの浄化率がどのように変化するかを研究しました。

また、こうした実験と並行して高性能な計算機サーバーを使った数値シミュレーションも活用しました。具体的には、詳細な表面反応を考慮したシミュレーションにより、実験では計測できない様々な特性値を調査することで、ロジウムという活性貴金属上にできる酸化皮膜の形成と分解過程を記述したあらたな数値モデルを構築しました。

ほとんどの乗用車には、必ず三元触媒が搭載されています。環境負荷の低減のため、さらなる三元触媒性能改善が求められているので、計算機を活用して製品を開発する「モデルベース開発」を支援することも、今回の研究の目的です。

グローバルかつ、意欲あふれる草鹿研究室

Q. 草鹿研究室を選んだ理由を教えてください。

理由は大きく2つあります。グローバルな視点で研究ができることと、草鹿教授の人柄に魅力を感じたことです。

草鹿研究室では、海外の企業や大学とも共同研究を行っています。自分の視点を海外へと広げられるグローバルなところが、とても気に入っています。私は英語の勉強をこれまで頑張ってきたのですが、研究活動をするなかで英語を使う機会がとても多いことも草鹿研究室の魅力の1つです。

草鹿教授の人柄については、学生一人ひとりのことを考えて対応してくださるところが素敵です。いろいろな教授の授業を受けてきましたが、草鹿教授が一番親身に対応してくださったと感じています。難しい授業や課題も多い中で、研究室まで質問しに行っても気さくに対応してくださったり、分からない時はすぐ説明してくださいます。

Q. 草鹿研究室ならではの良さは、どんなところですか。

まずは、早いうちからどんどん学会に出られることです。草鹿教授が「たくさん論文を書いて、どんどん学会に出よう!」というスタンスなので、早い人は3年生で実験を行って論文を書いています。日本に限らず、海外の学会に行く人もいるので、そこで海外の研究者と交流を持てるところも特長です。

また、企業や他大学と共同で研究を行うところも、この研究室の良さだと思います。私は、AICE(自動車用内燃機関技術研究組合)や茨城大学、熊本大学や名古屋工業大学と一緒に研究を行いました。オンラインMTGや共同研究先への出張もあり、社会人の方ともディスカッションする機会も多く、とても勉強になります。

同じ研究班には、修士・博士の先輩方もいます。皆さん、とても親身に相談に乗ってくださるのもありがたいところです。私の研究テーマはあまり前例がないこともあり、一人で研究していると心が折れそうなときもあります。でも、相談すると先輩も教授もすぐ助けてくださり、6月にいよいよ国際会議で研究成果を発表できるのも皆さんのおかげであると感じています。

英語でドイツ語を学び、院ではドイツ大学との共同研究へ

Q. 研究室以外でも打ち込んだことがあれば、教えてください。

サークルはESS(English Speaking Society)に入っていて、英語を使う機会を多く取り入れるようにしていました。英語でディスカッションしたり、他大学や留学生など外国の方と交流したり、2週間ニューヨークへ短期留学したりしました。海外には入学前から憧れを抱いていたので、英語や海外が好きな仲間たちとの活動は、とても楽しかったです。
最終的には、早稲田が主催するディスカッション大会で進行役を務めることもありました。

草鹿研究室が自動車大国ドイツと関わりが深いことも知っていたので、3年生の春休みに1か月間、ミュンヘンに留学しました。「英語でドイツ語を学ぶ」というプログラムで、「英語を使う」ということが試せて楽しかったです。こうした経験は、今も役に立っています。

Q. 今後の展望について教えてください。

今の研究が楽しいので、大学院でも現在の研究をさらに発展させる予定です。院ではドイツの大学や日欧の企業と共同研究を行います。また、研究対象をロジウムからパラジウムまで広げたり、実験装置もリアクター管に加えてエンジンも使用します。自動車の省エネ・排出ガス対策は重要なテーマなので、社会の課題解決に直結した研究ができうれしいです。

「なんとなく興味がある」なら、総合機械工学科はおすすめ

Q. 最後に、受験生へのメッセージをお願いします。

総合機械工学科は、漠然と機械工学に興味がある方にとてもおすすめです。機械工学系だけでもかなり多分野の授業がありますし、必修の授業は大体の分野を網羅できるカリキュラムになっています。どの分野も専門的な部分まで扱うので、授業や課題でそれぞれの分野と向き合ううちに、きっと好きな分野が見つかります。私も、オープンキャンパスで見たロボット製作に憧れてこの学科に入りましたが、熱力学が面白くなり今の道に進みました。

また、創造理工学部は全体的に、研究設備が他大学と比べても優れていると思います。1年生から専門学科に進み実験でさまざまな装置に触れられますし、早稲田の関連施設に伺って、研究室にない設備を使わせてもらえたりします。企業でも持っているところがすくない設備を学生のうちに利用できるのは、早稲田ならではの魅力かなと思います。

研究室という視点においても、早稲田の伝統を感じます。草鹿教授は自動車業界の第一人者ですし、そんな教授の研究室が100年間受け継がれていることは、早稲田の強みではないでしょうか。興味を持たれた方は、ぜひ総合機械工学科へ。